第5章 日中米/逆ハー? 血ヲ奉納セヨ
「うるさい上に無礼な娘あるね。我はすぐ料理して食べるほど無粋じゃねーある」
だからなんでお前ら食べる前提なんだよ!!
「なかなかいい素材みたいあるね。じっくり考えたいある」
だから食材扱いやめろ!!! と叫べるわけもなく……
と、彼の瞳が、なにかを反射したように黄金色に煌めいた。
それに誘われたように、人魂が彼の周りに集まってくる。
「……なに、菊がこのあたりに?」
「……?」
なにやら人魂と会話しているらしい。
注意は私から離れていた。
――今のうちに少しでもこの空間から離れるんだ!
そう自分を奮い立たせると、手足ををむりやり動かし駆け出した。
「あっ、待つある! ……ちっ」
声を後に死にもの狂いで水面を蹴ると、あたりを包む闇が少しづつ薄れ始めた。
しかし、すこしだけ違和感を感じた。
まるでなにかから干渉を受けているような、そんな薄れ方だったのだ。
やがて、隙間なかった黒に、とびきり濃い絵の具が染みていくように色が浸食していく。
はじめに古びた社で見た虹色が、じわじわと黒の上に色を重ねていく。
「待つある!!」
「ぜえぇ~ったいイヤ!」
「こ、こんの娘……!」