第5章 日中米/逆ハー? 血ヲ奉納セヨ
地面も少しづつ水の感触を失っていった。
あとちょっとだ!
「ぶっ!?」
突然顔面がなにかに突っ込む。
やわらかいが、温度がなかった。
なにかと思い、ものすごく嫌な予感とともに顔を上げると――
「ああ、あぶないところでした」
「~~っ!?」
さっき命からがら逃げてきたばかりの、軍服の妖がそこにいた。
こやつの胸に正面衝突した、というか、突然私の真正面に現れ道を阻んだらしい。
大丈夫ですか、とばかりに頭や顔に手を添えられながら、自分の血管という血管から血の気がひいていくのがわかった。
「こらああああああ!」
と同時に、右手ががっちりと掴まれていることにも気づく。
真後ろから響く声から、すべてを悟った。
チャイナ服の妖に余裕で追いつかれ、体の自由を奪われたらしい。
まるで地面から生えている手に掴まれているように、右足も動かない。
2匹(?)は、私という格好の獲物の所有権について争う気のようだ。
前からは軍服が、後ろからはチャイナ服が。
……つ、詰んだ…………