第5章 日中米/逆ハー? 血ヲ奉納セヨ
言葉の続きが途切れた。
ぴちゃん、という異音に気づいたからだ。
音源の地面に目を落とすと、信じられないことに、水面になっているではないか!
「なっ、なにこれっ!?」
水面は水銀のような輝きを揺らめかせながら、後ずさりした足から波紋をうんでいく。
地面のように立ってはいられるが、それはいつまでだろうか。
白い、不穏な光を放っている蓮も水面から顔をだしていた。
花のからすぐ下は暗くなっていて、水底はまったく見えない。
やばい、けっこう深いじゃん……!
空は、自分を囲む大気は、真っ黒に塗りたくられていた。
その闇の中から、黒ずんだ赤をした大きな月がこちらを見ていた。
「こ、今度はなんなのよ~~っ!」
「うるさい娘あるな」
「ひぃっ!?」
迷惑そうな声に縮み上がりながら、カチコチした動きで声の方を見る。
声の主は、チャイナ服に、くすんだ山吹色の布をマントのようにひっかけた、そんないでたちをしていた。
否が応にも目をひくのは、彼の左目に貼られた、御札だ。
彼が人ではないことを、ありえない程わかりやすく教えてくれていた。
「ま、また妖……!」