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夢と現実と時々妄想

第2章 偶然


セイヤに渡すクッキーが焼き上がり
可愛くラッピングを施す。

「喜んでくれるかなぁ〜」

口元が緩む。
美味しいって言ってもらうのが私の最大ミッション…!

セイヤに「今から行くね。」とメッセージを送信すると
「インターホンを押してくれ、待ってる。」
と返信がすぐに来た。


ーーピンポーン

「…」

「あれ…?、」

ーーピンポーンピンポーン


「……」

ーーピンポーン

「…あぁ、来たか。」

「セイヤがインターホンを押してって言ったんでしょ!まさかあの短時間で寝て…」

「…寝てない、ねてない。」

言いながらもすごく眠そうに目を擦る。

「もう11時だよ!お休みの日はこの時間まで寝ているの?」

「寝てる時もあれば、起きてる時もある。」

「もうっ、それはそうでしょうけど!!」

はい、これと言って私はセイヤにクッキーを差し出す。

「ありがとう。」

カサカサ音を立てながらゆっくりクッキーを取り出し
ひとつ手にとって口に運ぶ。

サクッ

「……どう、かな」

「これ、あんたが作ったのか。…すごいな、うまい。」

「…!ほんとに!よかったぁ!」

安心してホッとした私は
クッキーを食べ続ける彼をまじまじと見つめる。

玄関先で突っ立ったまま、なんだか寂しい。

「それじゃあ。ありがとう。」

そう言ってセイヤは「ほかに何か用があるのか?」とでも言いたげに私を見ている。
迷惑そうとか邪魔だと思うとかそういうのじゃないのは伝わってくるけど、その「なんでまだいる?」感が純粋だからこそ寂しさが、、、

私が外に出るとすぐにドアが閉まる。
鍵をかける音もすぐに聞こえた。

「名残惜しいのは、私だけ…か。」

セイヤも私を探してた、なんていうから
少し期待してたのに。
私とおんなじ気持ちかなぁって。
けどあの淡白さは、、、

「はぁ……」

寂しさを紛らわすためSNSに目を通していると
見慣れたクッキーの写真が目に止まる。

【セイヤ】
すごくうまい。

たった一言だけどすごく嬉しくなった。
空になってる箱の写真まで添えてあるのに私はクスッとした。
先程の寂しさは嘘みたいに消えていて今度はニヤニヤが止まらない。

恋は忙しくて、寂しさとかがあっても嬉しいことがあれば何倍にも膨らむのだからやめられそうにもない。
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