第5章 触れ合い
「セイヤ、今日は映画でも見ない?」
「あぁ。」
「セイヤ、お菓子持ってきたの。あとで一緒に食べよう!」
「…あぁ。」
「セイヤ、この間借りた本そういえば返してなかったね!今日持ってきたよ!あ、あとーー」
「…夢主…もしかして緊張しているのか?いつになく忙しいんだが。」
「だ、だってーー」
ずっと私がセイヤに抱き抱えられる姿勢で
ソファの上に私たちは収まっている。
朝、会いにきて今はもうお昼の12:30。
そろそろお昼にしよう、と言ったらセイヤは
「あぁ。」
と言ったものの離してくれる様子はゼロ。
そりゃ私も離れたくはないんだけど…なんていうかこの距離がとっても照れくさくてついつい勝手に口が動いてしまった。
そうしたら誤魔化していたのがバレたようだ。
「緊張しなくて良い。俺もあんたもいつもと変わらない。」
クスクス笑うセイヤに私は仕返しとして脇腹をつついてみた。
「えいっ!」
「…っ?!」
意外な反応が返ってきたのでおもしろくて何度か脇腹をくすぐってみる。
「…っ、くすぐったくないぞ。今のは条件反射だ。」
「またまたぁ、そんなこといってっ…!」
何度目かの奇襲でセイヤが反撃してくる。
「きゃっ!」
「…弱いんだな、ここ。」
そう言って触れるセイヤの手が優しくてくすぐったくて
ソワソワしてなんだか不思議な感覚になってしまう。
「ちょ、っと…んゃぁっ…!」
首にふぅ、と吐息をかけられ私は意図せず自分のものとは思えない変な声を出してしまった。
「…ダメだ。」
はぁ、とため息をつきセイヤはくすぐりをやめる。
なんだか急にそっけなく少し距離を取られる。
私が変な声を出したせいだとすぐに気がつき謝った。
「セイヤ…ごめんっ…私変な声ーー」
「いや、違う。これは俺の問題だ。」
セイヤは顔を背けてしまい完全に怒らせてしまったようだ。
しかし、よくよく見てみると耳が真っ赤で、恐る恐る顔を覗き込むと驚いたようにセイヤが片方の腕で頬まで隠すように口元を覆う。
「…俺の理性が危ない。」
「…!!」
急に恥ずかしくなりお互いそっぽ向いてしばらく黙り込んでしまう。
背中はほぼくっつくくらいの距離感なので私の心臓の音がセイヤに聞こえてしまわないか心配になるくらい静寂が私たちを包む。