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夢と現実と時々妄想

第3章 気づいてない


まだ時間もあったから俺は夢主に導かれるまま駅前の施設に向かう。

「よーっし!ハッピートマトちゃん!取っちゃうよーー!」

いつになくテンションの高い夢主に俺は少し圧倒されていた。
あの目は本気だ。

「…あれ?」

「…」

「…くっ!」

「……」

「もうちょっと…!!」

残念ながら何度やっても夢主はハッピートマトを捕獲することはできなかった。
悔しそうに少し目に涙を溜めながら俺にコインを渡してくる。

「…セイヤ……おねがいっ!」

「…あぁ。任せろ。」

正直自信はなかったが頼られると悪い気はしない。
コインを受け取りクレーンゲームのボタン操作を始める。

「セイヤ頑張って…!」

「…」

ガシャン
キラキラキラーンーーオメデトォーゴザイマスッ

「……っ!!わぁ!!!」

大きい音楽と機械の声で俺たちは祝福される。

「まさか一回で取れるなんてっ!!ありがとう、セイヤ!」

「なんてことはない。」

俺も1発で取れるとは思っていなかったが、無事取れてよかった。

「どこに飾ろうかなぁ。棚はいっぱいだし、机もダメソファもベッドもいっぱいだし…うぅーん。」

「そんなにいっぱいなのに欲しかったのか。」

「うん、だってこれは限定だから…!絶対欲しかったの!!お家に帰ったらなんとかレイアウトしてみる…!」

「…可愛いぬいぐるみを持ったあんたも可愛いな。」

「へっ?!」

「だからーー」

「いや!聞こえた!聞こえたからっ!!」

夢主はハッピートマトくらい顔を赤くして両手で頬を覆う。

俺は隣で笑う彼女を見ていると落ち着くことに気がついた。
あぁ、俺はこの笑顔を守りたいのかもな。
なんて言ったらまた赤くなるのだろうか。
それも見てみたい、が今回はこのくらいにしておこう。

ーー

「それじゃあ。」

「うん、またね!今日は、突然なのに付き合ってくれて、これも…ありがとう!」

ぬいぐるみを顔の前に高く持ち上げるとその脇からチラリとこちらを覗く。
まだ少し頬が赤く見えるのは、さすがに夕日のせいかもしれない。

俺たちは部屋にそれぞれ帰っていった。
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