第1章 シンデレラ〜継母との確執
「なるほどね。実のお母さんってどんな人だったの?」
佐伯さんが食べながら私に聞いた。
「とても優しくてケーキやクッキーを焼いてくれたりハーブを育てるのが趣味でよくいろんな料理に使っていました。でも父の不倫をきっかけに病気になって亡くなったんです。実はその時にとんでもないことを聞いてしまって・・・父は結局、不倫相手と別れたんですけど慰謝料を払わなくて済むとか保険金が下りるとか言ってたような?その頃私はまだ8歳だったのであまり分かってなかったんです。今となっては恐ろしいですけどね。」
私は食べながら実の母のことを話した。
実の母を思い出す。料理上手でお菓子作りも上手で絵本を読んでくれたりピアノを弾いてくれたりもした。
それなのに父の不倫が発覚した同時に膵臓がんが見つかった。
悔しかった!母が病院に行った頃には末期だと言われた。
病院に行くチャンスならいつでもあっただろうと思うけど、あの父のことだから実の母からお金をむしり取っていたとか、暴力を振るっていたとかそんなことしか考えられない。
そういえば実の母は年がら年中、長袖着てたなと。田舎でも夏は暑いのに長袖を着ていた。母に聞いたら冷え性だからと言っていたのに額には汗が滲んでいたような気がする。
もしかしてアザや傷を隠していたんだろうか?私がおやすみを言ってベッドに入った頃にいつも下のリビングでドシン、ドシンと音が響いていた。私は目が覚めたけど怖くて下には降りられなかった。
そこに何が待っているのか見たい気持ちもあったけど怖くて近寄れなかったのだ。それなのに翌朝、実の母は笑顔で私を起こしてくれてテキパキと朝食の準備をしてくれた。
あの時、何があったのだろうか?気になりすぎるけど過去の話だ。
そして私は実の母のことを思い出すと同時に父に対して怒りが湧いてきた。
母を実質死に追いやったもの。絶対に許せない!