第1章 シンデレラ〜継母との確執
この日、家に帰って掃除や片付けをしながら考えた。職場には他の仕事にも興味が湧いたからとでも言っておけばいいか。明日、施設長に言って仕事を辞める?そうだよね。だってせっかくもらったお給料は家のお金になってるんだもん。私だって好きなものを買いたい。好きな服を着て出かけたい。
そう思いながらこの日をやり過ごし、翌日になった。
「行ってきます。」
「仕事が終わったらサッサと帰ってくるんだよ?」
昨日は残業で遅くなった。会議があったと嘘をついて誤魔化すことに成功したけどさすがに今日はそうも行かない。
介護施設に着いて事務所に立ち寄ると施設長に私は思い切って告げることにした。
「失礼します。施設長、おはようございます。急な申し出で申し訳ないんですけど今月いっぱいで仕事を辞めさせていただきます。」
「おはようございます。あら?そうなんですか?いえ、山田さんの都合もありますもんね。でもすごく一生懸命でひたむきだった山田さんのことを応援してたんですけど何か職場で不満とかありましたか?」
施設長が申し訳なさそうに私に聞いた。
「いえ、そういったことはなかったんですけど。違う仕事に魅力を感じて1から知らないところでチャレンジしたいなと思ったんです。仕事にはやりがいを感じていました。でも・・・最近、自分としても仕事がうまく行ってないなと思ったんです。仕事以外のことでストレスになっていてそれなら持ち込まない方がいいのかなって。プライベートの話ですみません。実は母とうまく行ってなくて・・・いえ、ここまでしか話せないんですけど。」
「そうですか・・・残念ですけど仕方なですね。退職金は出しておくので今月末まで働いてください。他の階にはお知らせ出しときますから同じ階の方には伝えてくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
私はお礼を言って事務所を後にすると階段を駆けて行った。そして2階に上がるといる職員にだけ今月末で仕事を辞めることを伝えた。中には職員の会話が聞こえたのか残念がってる利用者様もいて申し訳なかったが、意を決したのだからと自分を鼓舞した。
そう思えてくると今月末までの仕事は思った以上にサクサクと進んだ。そして介護士をやめることができた。
ロッカーの鍵を返して退職金をもらった私は佐伯さんの事務所に出向いて仕事を辞めたと報告してきた。