第1章 シンデレラ〜継母との確執
「それは大変でしたね。なるほど。」
佐伯さんは顎に手を当てて考え込みながら言った。
「要するに継母のしてきた行いを曝け出したいってわけですな。」
「そうなんです。でも、お姉さん達が戻ってきた時にお母さんを庇ったりされたらそれこそ証拠も掴みにくいかもしれないですし。防犯カメラを母お金がなくて。」
「介護施設では働いてるけどお給料が回ってこないとは侵害だなー。さてどうするか?それなら思い切って仕事辞めますか?」
「はい?」
この人は何を言っているのだろう?仕事を辞める?そんなことしたら母になんて言われるか・・・。それにお金はどうすれば??私はこのことで頭がいっぱいだった。
「今の仕事では継母のいいなりで働いてるとしか思えないので正直、働いてて楽しくないですよね?」
「まぁ・・・言われてみれば。」
佐伯さんの言ったことは確かに当たっていた。
仕事が楽しいのではなく外に出られたことが嬉しかった。仕事にやりがいを感じてるのかと思えばそうでもない。
「今の仕事を辞めれば退職金は出るはずです。そのお金で防犯カメラを買うんですよ。」
佐伯さんはそう言って立ち上がった。
「でも、今の仕事を辞めたらどうやってお金を稼ぐんですか?」
私は必死になって聞いた。
「スマートフォンは持ってますか?」
「はい、一応。必要なアプリしか入れてないんですけどね。」
「そうと決まればインスタグラムをやりましょう。イラストは高いですか?」
佐伯さんに聞かれて答える。
「絵はしばらく描いてないのでわかりません。でもやってみます。」
「イラスト術を学んであなたの体験を漫画にしたらいい。インスタにそれを載せるんです。そしたら誰かが目に留まりコメントも増えてきます。そしてゆくゆくはそれが書籍化なんて夢じゃない!あなたならできます。漫画なら事務所に寄って描いてくださいよ。」
「でも、介護の仕事を辞めて事務所で漫画を描くなんて怪しまれないかな?それに私は夜勤もやってるので夜も行かないと怪しまれるのでは?」
「継母には黙って仕事を辞めてくるんです。だってそうでしょう?あなたの人生なんだから自分で決めなくちゃ。夜ならたまにうちの事務所に泊まれば夜勤した時間と同じになるはずです。考えてきてくださいね。」
佐伯さんにそう言われて私は頭の中を整理することにした。