第1章 1
「あの、景吾?話が見えな、」
「そいつが俺に言いやがったんだよ。俺じゃお前を幸せには出来ねぇってな。大した宣戦布告だぜ」
「なっ…」
「…なぁ叶弥。お前もそう思うか?」
「え?」
「俺じゃ、お前を幸せには出来ねぇのか?」
「景吾…」
「らしくないのは百も承知だ。だがな、流石にこたえたぜ。そんで、悶々とそんな事を考えてたもんだから、お前に会うのが怖くなっちまってな…」
「怖い?どうして…」
「俺はお前に、どう思われてるのか…。それを知るのが怖かったんだよ。不安で仕方なかった」
跡部はそう言うと、叶弥を抱き締める腕の力を強めた。
その拍子に、跡部の上着のポケットが小さな音を立てた。
その音に叶弥がなに?と反応する。
「今の音なに?ポケットに何か入ってるの?」
「あ?あぁ、まぁな。叶弥には関係ねぇよ」
「ふーん…」
叶弥は跡部の返答に気の無い返事を返しつつも、にやりと笑うと体を捩らせポケットへと手を伸ばした。
それに気付いた跡部が、ひょいと身を逸らす。
「何しやがる」
「だって、気になるじゃない。関係無いなんて言われたら尚更っ」
「チッ、気にすんじゃねぇよっ」
「無理っ!」
「わっ、バカ危ねぇ!」
止める言葉も聞かずに、叶弥は次の瞬間跡部に向かって飛びついた。
それを受け止めた跡部は、どん!とその場に仰向けになって倒れ込む。
必然的に、叶弥は馬乗り状態で。
けれど、そんな事にはお構いなしに、叶弥は隙をついてポケットから『何か』を取り出した。
見ると綺麗にラッピングされた小さな箱。
それを確認した瞬間。
叶弥の表情は一気に曇っていった。
自分には関係ない、可愛らしい箱。
(これ、どう見てもプレゼント、だよね…)
景吾が貰ったの?それとも…あげるの?