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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第9章 揺蕩う幸福



「敵と戦ったんだってな。あの後、13号とはぐれたのか」
「うん、敵の靄の個性でみんなほとんど飛ばされちゃって。でも、切島くんと爆豪くんが近くにいて、助けてくれたよ」
「……そうか」


 相澤の目に一瞬の安堵が浮かぶ。
 たとえ一人で動ける程度に回復していても大怪我を負っていた事実は変わらない。
 結は相澤をソファーに座らせ、その間に生ぬるくなった飲み物を冷蔵庫にしまった。


「水を買うなんて珍しいな」
「これは爆豪くんからもらったの。牛乳買う途中でばったり会って、荷物も持ってくれて」
「あの爆豪が? 意外だな」


 結は二人分のコップを用意し、机に置いた。
 両手に視線が集まっているのに気づくと、隣の空席に腰を下ろそうとした。


「手の怪我は治ったか?」


 相澤の問いかけに結の肩がビクリと揺れる。
 ぐるぐると回る思考の中で、声を震わせずに必死に絞り出そうとするのが精一杯だった。


「山田から聞いた。さっきから右手を庇った動きをしてるだろ。その反応じゃ、まだ痛いのか」
「だ、大丈夫だよ。治してもらったけど、まだちょっと痛いだけで」
「婆さんはなんて?」
「け、経過観察するしかないかなーって」


 相澤が未だに疑いの眼差しを送る中、結は「でも、ほら」と両手を握って広げて見せた。
 痛がる様子は一切見せず、できるだけ普通に振る舞おうとする姿に相澤の視線がわずかに和らぐ。

 結は痛みを隠すために、右手に走る激痛を必死に遮断していた。
 鎮痛剤を飲んでおいて良かったと、心の中で安堵の息をついた。


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