第3章 君の味方に
「随分と仲良くなったんだね。気の合う子がいるのはいいことだよ。右手は、治癒しとくかい?」
「ううん、包帯だけお願いします。それと、お菓子もください」
「はいよ。たんとお食べ」
リカバリーガールは緑谷へ渡した錠菓に加え、引き出しの奥から次々と菓子を取り出し、机の上に整えていく。
色とりどりの包み紙が並び、結の瞳がわずかに輝いた。
それでも、右手は膝の上から動かない。
手首から指先まで包帯を巻く途中、リカバリーガールの手がごく短く止まったが、何も言わずに処置を続ける。
彼女は結の個性にある代償を誰よりも深く理解していた。
「あの子にも言ったけど、無理は禁物だよ。ヒーローを目指すのは立派なことさ。だけど、なる前に手が利かなくなっちゃ元の子もない」
穏やかな声に潜む鋭さに、結は視線を落とす。
目の前のキャンディーがなぜか遠くに見えた。
「でも……無理をしないと、ヒーローになれないって」
「必ずしもそうじゃないよ。それに、アンタさんの個性は――」
「これは……いつかそのうち、慣れるはず」
結は左手でひとつ菓子をつまみ、口に運んだ。
広がる甘さが、張りつめた気持ちをわずかに溶かす。
体を削ってでもヒーローになりたいという覚悟は、ずっと前から決めていた。
リカバリーガールは胸の奥に疼く思いを押し込め、黙って記録をつける。
その傍らで、結は椅子を押して壁際に下げた。