第2章 容赦ない距離の詰め方
「先触れはしたのだけど、突然に訪ねてすまない。執事にここへ案内されたんだ。それで、それは?」
「お・・・。」
「お?」
「お菓子です。」
「初めて見るけれど、どういったものなんだ?」
今更隠すことも出来ないので、お茶をする場を整えて貰って試食会となった。海老の殻を乾煎りして粉末にしたものを入れているので余計に香ばしく感じる味となっている。
「これは・・・海老の味がする。お菓子と言うから甘いのかと思ったが、これはこれで美味しいな。」
前回同様、面白い様に減っていくお菓子。
「そ、それで今日はどの様なご用でしょう?」
「近くまで来たから、フェリシア嬢の顔を見たくて立ち寄らせて貰った。それで、前回話したことだが街散策に行こうと誘いに来た。都合はどうだろう?」
「大丈夫です。」
しかし、彼は前世でいう優良物件だ。他にも高位の貴族令嬢が放っておかないのではないかと思うのだけど。私にばかり構って・・・あ、いや、ひょっとして今日出掛けていたのは他の令嬢と出掛けていたりとかしてたり?
「私にフェリシア嬢以外に心を寄せる人はいないよ。」
突然のカミングアウトに、私は茫然として彼を見た。今、何って言った?えっ?と、突然・・・って言うか、私の考えていることお見通し?
「一日でも早く、私がフェリシア嬢を思う様に、フェリシア嬢が私のことを思ってくれる様になればいいと思っているよ。」
アメジストの瞳が、私の視線を絡め取って反らせてくれなかった。
「基本的に、他人に興味がない私だから、一日も早くフェリシア嬢には私に堕ちて欲しいのだけど。」
ど、どうしたの?どうして、こんな急に距離を詰める様なことを?それに、他人に興味がないって?ちょっと、頭の中が大変なことになっている。
「あ、あの・・・急にどうして・・・。」
「さぁ、どうしてだろうな。私も他人に興味を持ったのが初めてだから、よく分かっていない。ただ・・・フェリシア嬢が好ましいって事だけは分かってる。待ってはあげられるけど、他の誰にも譲るつもりはないから。」
本当に、急にどうした?それに、私の顔は真っ赤になっているだろう。まだ十歳だけど、将来見た目も有望な彼を目の当たりにして好きなんて言われたら・・・。