第15章 正攻法
それでも、アル以上に好きなものはないと言えば、どうやら納得してくれた様だった。ただ、教室内にいても好き好きコールは流石に恥ずかしい。
さて、あの後の彼女たちのことだ。
王子から直接の苦言が発せられ、彼女たちの家は戦々恐々としたらしい。ただ、こんな事になった切っ掛け。それは、あの令嬢の立ち振る舞いだった。
婚約を結んでいた取り巻きの幾人かが、取り巻きとの婚約を解消してはあの令嬢に恋慕し心酔していた。その腹いせに、アルに対する令嬢の思いを増長させた。周りは認識していた。それも正しく。
アルはどんなことをしても、手に入る事はないのだと。それを見て、自分たちのプライドを何とか保てさせていたのだ。
令嬢は婚約解消の話しを子息たちから聞いて、余計に人の心変わりは簡単なのだと錯覚した。友好国の留学生との付き合いに水を差した彼女たちは、厳しい処罰が下された。
本人に八方美人という認識はなかったのだろうけれど、人の嫉妬は怖いなと思った案件だった。
そして、状況が落ち着いて来た頃。
私たちは次の国へと向かう時期になっていた。あの事があり、心変わりをしなかった婚約者たちはより深く思い合い慈しみ合い、絆を深めて行った。
「心を病んで、修道院に入ったわ。少し可哀想だわね。」
「明確な意思表示と、拒絶は大事だろ。そうしなかったから、私とフェリシアは巻き込まれた。いい迷惑だ。」
「そうね。そうなのだけど・・・。」
ネスタリアが、言い淀んでいる。
「どうかしましたか?ネスタリア様。」
「元々は、本当にいい方だったの。ただ、人付き合いは考えた方が良かった。」
「そうですね。いい方だったのかもしれませんね。」
私を悪口から庇ってくれた人だ。
「そうだとしても、私はアルをあげられませんから。アルは私にとって、とても大切で愛しているんです。」
「アラアラ、まぁまぁ。ご馳走様。良かったですわね、クライン様。」
「これが正攻法か・・・。そうだな、いいものだな。フェリシア、私も愛している。では、行こうか。」
皆に見送られ、私たちは次の国へと馬車を走らせた。