第12章 ネーフェル王国へ
馬車に揺られながら、モーリスからの手紙を読んだ。向かう先は、ネーフェル王国と言って先代国王の姉君が嫁いだ国だと書かれていた。
王妃として絶大な人気と政治手腕を駆使して、民に心を寄せる人だったそうだ。数年前に亡くなっていて、その長子が今は国王となっている。
モーリスがこの国に身を寄せていた時、縁者となる王子とその幼馴染みと共に行動していた様だ。信じるに値する人柄だと書かれていた。モーリスが言うのなら、そうなのだろう。
更に、もう一通。それは、セーランからのものだった。
ネーフェル王国の内情を詳しく書いてくれていた。これも、元・王女である母君からの情報もあるのだろう。そして、ネーフェル王国の問題児は、公爵家の子息だと書かれていた。
取り巻きを従え、身分を笠に着せた傲慢な態度を取っている存在。そして、王子をライバル視しているらしい。
もう一つの情報は、私たちの滞在先のことだった。ある侯爵家の屋敷で世話になれる様に取り計らってくれた。
「ねぇ、アル。どれくらい滞在予定なの?」
「一応は一年だな。次はセーランが遊学していた国に決まっているが。」
「えっ、そ、そうなの?でも、クラウド皇子は何も言って無かったけれど。」
「セーランがこれから説得するそうだ。」
「えっ・・・あの・・・断られるという選択肢は?」
「エルマルタ嬢に嫌われる事などやるはずがない。だから、問題ない。」
ひょっとして、そういうことも見据えてアルはキャサリンとの付き合いをそこまで否定しなかった?
「・・・何か、アルの言う通りだと思ってきた。まぁ、何も国を乗っ取ろうとかする訳じゃないものね。でも、皆にお世話になっちゃった。」
「代わりと言ってはアレなんだが・・・私たちに、任務があるんだ。」
「任務?」
「フェリシアがいれば、もう叶えられたものだ。問題はないだろう。」
えっ、私は権力も地位も名誉も知名度もないよ?何、その私有り気の計画。どんなことをさせられるのだろう?
気が気でなかった任務に頭を悩ませていた私だったのだけど、十日後にはネーフェル王国に到着した。出迎えてくれたのは、王子の幼馴染みであるイクス=ジークフリード様。
見た目は賢そうな印象。何処かの執事とかやってそうな容姿をしていた。ただ、アルと顔を見合わせてガッチリ握手をしているのを見て、ちょっとだけ心配になった。