第11章 剣術大会
「ブローチありがとう。それで、モーリス様が言っていたのだけど。」
「あぁ、このまま付き合ってくれ。じゃあな、モーリス・セーラン。世話になった。」
私は意味が分からないまま、アルに連れられて馬車に乗り込んだ。そして、直ぐに説明をアルから聞かされた。
「えっ・・・留学?私とアルが?」
まさかの展開に、驚きが隠せなかった。
「あのバカ王子が、悪あがきを企んでいるとセーランに聞いた。だから、物理的に近寄れない様にする。」
「そう言えば、最近の王子って大人しかった様な・・・。」
「私から奪い取って、自分の婚約者にしようと画策してた。聖夜祭で愛を誓い合った恋人は、神に祝福されると言われているだろう?だから、聖夜祭の開催時に大勢のギャラリーの前で強制的に婚約を結ばせようとしていたそうだ。」
それを知ったアルは、ご褒美を二人で同盟国に留学することに決めたと話してくれた。私の両親にも、説明はしてあるそうだ。
「今は未だ私も権力には太刀打ち出来ない。だから、この数年で力を付けるつもりだ。すまないな、私の一存で全てを決めて。」
「また、この国に帰って来れるのよね?」
「あぁ、戻って来る。」
「なら、アルが傍にいるのなら私は構わないよ。」
「そうか。フェリシアに嫌われたらどうしようか気が気でなかった。」
「アルを嫌ったりしない。」
まさか、このまま同盟国まで旅を始めるなんて考えてもみなかった。そして、用意周到なアルは旅の支度もバッチリされていて、私の私物も揃っているのを見せられてアルらしいなと思った。
どれもこれも、私の為に動いてくれたことだ。嫌いになるなんてありえない。留学先の国は、以前、モーリスが遊学で滞在していたところだった。
両親も驚いただろうな。アルとの未来を決めた時から、色々と心労を掛けさせてしまっていると思う。でも、アルだから反対しなかったと思う。
だから、これからもアルと仲良く頑張っていこうと思う。