第8章 嫌がらせ
アルが私を気遣ってくれる。
「・・・許せないな。私の可愛いフェリシアに悲しい思いをさせるなんて。絶対に許せない。」
「アル・・・何とか出来ないかなぁ?キャサリンのお見合いの相手が、十七歳も年上なんて可哀想だよ。」
相手の年齢は三十歳。王城に勤めていて、王子の数少ない支援者の二番目の息子らしい。アルは無理矢理公爵家に婿入りさせて、公爵家を自分の陣営に引き込もうとしているのだと言っていた。公爵家には、年の離れた弟がいると言うのに。
「嫌がらせをしたのは、あっちが先だ。だったら、遣り返さないとな?」
アルが悪い顔をしている。
「どうやって遣り返すつもり?」
「クラウドに婚約者になって貰えばいいだろう?それが一番だ。」
確かに、キャサリンにとってそれが一番かもしれない。推しだもの。でも、隣国の第一王子に何と言えばいいのか分からない。
「クラウド様に婚約者は?」
「いないそうだ。だからこそ、あのバカ女も粉を掛けてんだろ。バカ王子が全然靡かないものだから。」
そう言えば、見た目はあんなに可愛らしくて庇護欲をそそられ人の懐に入るのが上手いのにどうして?
「全力で嫌がらせしてやろうな?」
えっ、何でそんな笑顔なの?悪い顔をしているのに、それすらも格好いいなんて。
そうして、アルの全力嫌がらせに自ら巻き込まれてくれたのはモーリスとセーランだった。幾ら、従兄弟同士とは言え、これでいいのだろうか?
この日から、三人の悪だくみが始まった。それにしても、どうしてこの二人は王子の事をこうも嫌だと思っているのだろう?
その理由は、思いがけず簡単に知ることとなった。