第7章 思いがけない人との出会い
そんな事をしたら、貴族の信任なんて得られるのかしら?それに、現宰相の娘が婚約者候補だって今でも噂があるままだし。
「宰相の娘さんは、どう思っているのだろうね?関わりがないから、分からないわね。」
そんな話題で、二人揃って溜め息を吐く。
色々と、王子とヒロインが面倒くさい存在だ。いっそ、二人で纏まってくれればいいのに。切実にそう思う。
それに、将来的にあんな王子が国王になれば、この国の未来は良くならない気がする。
「クライン様から声を掛けられた時は、本当に驚いたの。きっと、私がフェリシアに声を掛けたがっていたのに気付いていたのだと思う。あ、私はヤンデレは無理だから心配しないでね。」
「心配はしていないけど・・・ちょっと複雑。ヒロインはアルも手に入れようとしているのよね?」
「そうだと思う。それに、攻略者だけじゃないみたい。気に入った貴族の令息に色々と粉掛けているもの。」
本当に気が多すぎて嫌になる。何処まで節操無しなのやら。
ヒロインが私たちを陥れる為に、悪だくみをしているのは変わらない。でも、今は夏休み。それに、私には理解者がいる。
だから、安心していた。そして、夏休みの間はキャサリンと前半は情報交換をして、残りはアルと意思疎通を図り、最後に領地に戻ってローエン家の屋敷でアルと羽を伸ばしていた。
そう、アルとである。これも毎年同じスケジュールである。
勿論、本業を疎かにした訳じゃなく、そこもアルによって勤しむこととなっていた。合間には、友人たちとお茶会などもしたりしたけれど、概ね、例年と同じ時間を過ごしていた。
だから、夏休みが終わって元の生活に戻った初日、私はこれまた以外な人に関わられて驚きを隠せなかった。どうして、今になって私に関わって来ようとしたのだろう?
その人と対面した私は、ただその人を見詰めるしか出来なかった。