第6章 学期末テスト
それは、学期末テストの泊まり込み勉強会の話題で話し合っている時だった。可憐な鈴が鳴る様な声のヒロインが、私たちの会話に混ざって来た。
アルは相変わらず私にベッタリで、私の手を握り締めて手の甲を撫でるのに忙しくしている。要は、見向きもしない。
友人二人は、怪訝な顔でヒロインを見ている。私は視線を反らせてくれないアルのおかげ?で、アルと見つめ合っている。
「何?」
珍しく対応したのは、怪訝な声色のセーラン。
「勉強会するのでしょう?だったら、皆でやった方が」
「俺たちの皆は、このメンバーだけだから。」
全く以って、取り付く島もないセーランの言葉に、ヒロインの大きな瞳は見る見る内に水分が浮かんでくる。
「ワザとらしく泣くつもりなら、目障りだから向こうで勝手にやってくれ。あぁ、ケヴィン(王子の名)に告げ口でもするか?別にどうでもいいけど。」
先日の超音波ではなく、サメザメとその場で泣き出したヒロイン。ただ、ヒロインにとっても予想外だったのは、セーランの行動だった。
咄嗟にヒロインの腕を掴んでは、王子たちの元へと連れて行きヒロインを押し付けた。
「高名な王子様は、万人に気遣いが出来るのだろう?クラスメイトが泣き出したから、世話してやれば?」
誰もがこの物言いに驚きを隠せなかった。幾ら従兄弟同士だとはいえ、相手は王子だ。
「ほら、お前らも影ではかなり仲良くやってんじゃないか。いつもの様に、慰めてやれよ。」
カラフルな髪色の攻略者たちに声を掛ければ、複雑そうな顔をしては顔を見合わせていた。
王子に遠慮なくヒロインを引き渡しては、元の席に戻って来たセーラン。モーリスとは、似通っている性格をしているのだとこの時になって感じられた。
王子は・・・視線を向けようとして、アルに抱き締められた。ここは教室だ。
「私に妬かせたいのか?」
「えっ、そんな事は・・・。」
直ぐに離されたから、それ以上は何も言えなかった。
「ホント、ハーレムだよなぁ。」
ポツリと呟いたのは、苦々しい顔をしたモーリスだった。モーリスたちは、ヒロインの裏の顔的なものでも知っている様だ。
将来は立太子として王子の側近候補のメンバーだと言うのに、今の彼ら攻略者たちはサメザメとなくヒロインを宥めることしか出来ていない。