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イケメン戦国《私だけを囲うひと》

第1章 私だけを囲うひと



〈家康視点〉

…まったく、呆れる。

廊下の角を曲がったところで、俺は足を止めた。

振り返らなくても分かる。
あの二人は、まだそこにいる。

あの子は気づいていない。
光秀さんがどんな目をしているのか。

さっき、背後から現れた瞬間。
空気が変わった。
あの人は笑っていた。
いつも通りの、読めない笑顔。

でも目だけは違った。
獲物を見定めるみたいに、静かに冷えていた。

俺に向けられた視線は一瞬。

「賢明だな」

そう言われた時、ぞくっとした。

怒っているわけじゃない。
威圧もない。
あの子には、そう見えただろう。

ただ、俺は牽制されただけだ。

——触るな。

あの子が「優しい」と笑うたび、光秀さんの腕の力がほんの少し強くなる。

誰も気づかない程度に。
でも、俺は気づく。
光秀さんは、絶対に手放さない。

あの子を囲っている自覚もある。
それでも責めない。
縛らない。
ただ、甘くする。

それが一番厄介だ。

「光秀さん、今日はいつもより優しいですね」

廊下の向こうから聞こえた声に、思わず舌打ちが出た。

違う。
いつもだ。
あんたが気づいてないだけで。

光秀さんはたぶん、一生言わない。

「嫉妬した」なんて。

代わりに、もっと優しくする。
もっと近くにいる。
もっと自分から離れられなくする。

あの子が、気づかないうちに。

……本当に、恐ろしい人だ。

なのに。
あの子は幸せそうに笑ってる。

だから余計に質が悪い。

俺は小さく息を吐いた。

「まあ……泣かされる心配はなさそうだけど」

あの人の溺愛は、静かだ。
でも逃げ場はない。

きっと一生、ね。





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