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イケメン戦国《私だけを囲うひと》

第4章 本音



「——と、言ったらどうする?」

……その言葉に、空気が一瞬で張りつめた。

私は思わず息を呑み、彼の目を見る。
冗談とも、本気ともつかない色。
私は見つめることができず、瞳を揺らした。

「……どうする、って?」

問い返すと、光秀さんは首元に触れていた手を、ほんのわずかに離した。
きつく触れていないのに、そこにあった温度だけが残っている。

「やはり、困った顔をしたか」

低く、落ち着いた声だった。
けれど、目は私の反応を一つも逃さない。

「冗談ですよね」

そう言うと、彼は小さく笑った。

「半分はな」

「半分……?」

「言わない主義だと言っただろう」

そう言って、今度は私の顎に指先をかける。
光秀さんの長い指が私に触れ、視線が合った。

「お前が心配する顔をするのを見ると、つい試したくなる」

「意地悪です」

「…まあ、否定はしない」

囁く声は、昼間の公務の顔とはまるで違う。
余裕と影を帯びた声。

…私だけが知る、光秀さんの夜の姿だ。

「だがな」

彼は、きちんと距離を保ったまま言った。

「本当に縛るつもりなら、こんな言い方はしない」

光秀さんの目が、ふいにやわらいだ。

「逃げられる余地を残したまま、言葉だけでお前を拘束する。
それが———俺の本音だ」

胸が、どくんと鳴った。

「……ずるいですね」

「そうか?」

「はい。知っていて言うところが」

すると光秀さんは、静かに息を吐いた。

「だから、あまり本音は言わない」

一歩だけ、私に近づく。
けれど、それ以上は来ない。
それが寂しいと思ってしまう。

「こうして夜に来て、心配だなどと言われると……」

声が、低く沈む。

「抑える方が、体に悪いからな」

そう言って、ふっと視線を外した。

「さあ、今夜は帰れ」

私を拒むのではなく、まるで守るような言い方だった。

「続きは……また偶然会えた日にしよう」

そう言って、襖が開けられた。
私は何もされていないのに、胸が熱くなったまま光秀さんの自室から出た。


———鎖なんてなくても、
光秀さんの言葉一つで、私はこんなにも囚われてしまう。

触れられた首元をなぞりながら、そんなことを思った。



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