第5章 トライアングルのち…【虎杖悠仁&伏黒恵・高専編】
side 雫
悠仁は今まで見たこともないような優しい顔で私を見つめた。
「雫がさ、生まれてきてよかった、って自分で思えるようにする事。
俺等はとっくに思ってるよ?
けどそれは雫自身が思わなきゃ意味がないんだ。
世の中には楽しいことが沢山あって、安心できる場所があって、自分にはちゃんと価値があって、この先の人生だって自分でいくらでも選べる。誰かに支配される事なんてないって、雫に思ってほしい。」
『悠仁……』
「雫が寂しい時は俺等がいつでも側にいるし、力になる。だから…忘れなくていいけど…
お母さんにはもう期待しない方がいいよ。
それは難しい?」
涙が頬を伝う。
『そんな事ない…ありがとう…悠仁…』
「ん。泣かないで雫。俺雫が笑ってんの、すげー好きなんだよ。」
ヘラっと笑って涙を拭ってくれる悠仁につられて笑う。
「ったく誰が泣かしてんのよ。美味しいとこ取りしやがって。」
「えっ、そう?」
「伏黒、あんたも何とか言いなさいよ、仲間として。雫への決意表明。」
「は?」
「雫の話聞いてなんとも思わなかったの?
何か感じたでしょ、デリカシーないなりに。」
「その言葉が既にデリカシーないだろ。ったく……
雫…大変だったな。
俺達にできる事は何でも言ってくれ。」
「………は?それだけ?」
「何だよ、パっと思いつかないんだよ。」
「全くあんたって奴は…」
『ふふっ…皆、ありがとう…
正直私の事なんて忘れてるんじゃないかな、って思ってたよ。私…幸せだ。悠仁、もう思っちゃったよ。生まれてきてよかった、って。』
「雫ー…何でそんな可愛いのよ。反則だ、このこのー。」
『いたたた……』
「おい、やめろ釘崎。
そんな顔になったらどうすんだ。」
「こんな綺麗な顔、少し位歪んだ方が丁度いいのよ。」
「僻むなよ釘崎。」
「はぁ?誰が僻んでるって?バカじゃないの。」
野薔薇が私の頬をぎゅっと摘んで優しく伸ばす。
こんな風に友達に感謝した事なんてなかった。
こんなに友達に良くしてもらった事もなかった。
自分が支えてもらうだけではなくて、自分もこの先3人を支えたい。心からそう思った。