第5章 トライアングルのち…【虎杖悠仁&伏黒恵・高専編】
「雫…無理しなくていい。これからいくらでも時間は…」
『大丈夫…ありがとう、恵。
話せる…話したいの…』
呼吸を整え、話を続ける雫。
『会った時にはもうお母さん…お腹が大きくて妊娠してるってすぐわかった。奥から知らない男の人が出てきて…
弟ができるから世話してね、って。
その時私はただの…面倒見要員だったんだって気付いた…』
釘崎が鼻をすする音が聞こえる。
俺と虎杖も俯きながら黙って雫の話を聞いた。
『私の事なんて…誰も見てないな、って思った。
誰も私に興味ないって…虚しくて堪らなかった。
高校生になって…家に帰りたくなくて毎日家の近くの公園のベンチに座ってたら五条先生が声をかけてくれて。しばらく特訓して、高専に入学することになったの。
皆と生活するのは凄く凄く楽しかったけど、やっぱり家にはどうしてもいたくなくて…
夜男の人に会うようになった…』
「…っ……」
明らかに動揺する虎杖。俺も同じだったからすぐにわかった。
『エッチすれば男の人は一緒にいてくれるし、優しくしてくれる。辛くもないし、お金が貰えればどこかに泊まれる…帰らなくてもいい…
全然知らない人でもキスしてもらえれば安心したし、抱きしめて寝てもらった時は朝までぐっすり眠れた。
何でもっと早くこうしなかったんだろうって思った。
でもそのせいで…あんまり学校行かなくなって…怪我もしちゃったから…
五条先生が気づいてくれて、休んでいる間は空いてる社宅に住ませてもらって、クリニックに通ってたんだ。
今は薬と定期的なカウンセリングでそういう衝動も減ってきてる…大丈夫だと思う。』
話しきって安心したのか、コクコクとお茶を飲み干す雫。コップを置くと同時に虎杖が雫を抱きしめた。
「ごめんな…
全然気づかなくて。けど少し安心してる。雫がちゃんと病院行って…心のケア受けてることも…家族から離れて住もうって思ったことも…」
雫を抱きしめる手に力が入り、頬を寄せる虎杖。
「俺は雫の笑顔にすんげえ救われたよ。
じいちゃん死んで、呪い食って処刑対象んなって…
何で俺が…って思った事もあったけど、高専入って頭ん中整頓出来たっていうか…それに…今新しい目標できたわ。」