第5章 トライアングルのち…【虎杖悠仁&伏黒恵・高専編】
俺達は日常を変わりなく過ごしたが、それでも雫の事を考えない日はなかった。
3人で揃った時に雫の話題になると、辛気臭いのは嫌いだと釘崎が言い、俺も虎杖も賛同して皆明るく振る舞った。
雫がいつ戻ってもいいように…
今度は自分達が力になれるように…
ニヶ月後、高専に戻ってきた雫はいなくなった頃に比べると、いくらか元気そうに見えた。
自宅から通う事はやめ、高専の寮に入ることになった為、皆同じことを考えたが本人には聞かなかった。
荷物の運び込みを終えた夜。
釘崎からの提案で、俺達3人は雫の部屋に向かった。
コンコンコン…
『はぁい…って、え……?皆揃ってどうしたの?』
驚いたように微笑む雫の姿に皆、安堵した。
「雫、今日は引っ越しお疲れ。引っ越しといったら蕎麦っしょ。皆で食おうよ。」
虎杖がカップ蕎麦の入った袋をヒラヒラと雫に見せた。
「私達はミニサイズね。こんな時間に炭水化物なんてとったら美容に悪いわ。」
「夜更かししてゲームしたりアイス食ったり、美容に悪い事なんて他にいくらでもしてるだろ。」
「伏黒何か言った?」
「別に。」
「なぁ、何でお前らっていっつもケンカすんの?せっかく雫が戻ってきたのに。笑顔で仲良くできないわけ?」
「無理。」「できない。」
『ぷっ…』
クスクスと笑う雫。
『本当、変わってないよね。安心した。』
カップ蕎麦を食べ終え、空になったカップを捨てようとビニール袋にカップを入れ始めると、意を決したように釘崎が口を開いた。
「あのさ…雫。」
『ん…?』
「また…皆でこうして揃ってご飯食べたり、一緒に過ごしたりできるかと思ったら…凄く嬉しい…
もしかしたら帰って来ないんじゃないかって…
思った事もあって…」
涙を溜め、目尻を赤くしながらポツポツと話す釘崎。
俺には理解できないセリフや言動が多いが、基本的には優しい奴だと思う。
カップを捨てる手を休めずに、黙って釘崎の言葉に耳を傾ける。
『野薔薇……ありがとう…』
雫の瞳も潤み、鼻先が赤らむ。