第5章 トライアングルのち…【虎杖悠仁&伏黒恵・高専編】
『恵、明日は任務あるの?』
下着のホックをつけながら、雫はいつもと変わらず、にこやかに俺に話しかける。
「今のところ入ってないが…
急に呼び出されたりとかあるからな。それに備えていようとは思ってる。」
『そっか。』
俺も部屋着に着替えようと、Tシャツを被る。
互いに服を着始めるこの時間が…俺は大嫌いだ。
『恵…』
制服まで着終えた雫が俺に抱きついてくる。
『今日もありがとう。おやすみ。』
頬に軽く口付けられ、抱きしめたくて腕を回そうとすると、するりと離れていく雫。
『あ、ごめんね…』
焦った雫がまた俺を抱きしめる。
「いや…タイミング悪かった。」
雫をぎゅっと抱きしめると、胸がチクリと痛くなった。
「おやすみ。また…明後日な。」
うん、と微笑み、雫が出ていくと、とたんに色を失ったようにシン…と静まり返る部屋。
「ありがとう…か。」
雫は俺と虎杖、釘崎よりも少し遅れて仲間になった。
俺は全然興味がなかったが、女子が入るとあって釘崎も虎杖もテンションが上がっていた。
五条先生と一緒に初めて教室に入ってきた雫を見た時。
「何よ…私より美人とかいらねーんだけど…」
釘崎かボソリと言った言葉通り、その場にいた俺も虎杖も一瞬にして雫の容姿に心を奪われた。
『悠木雫です。よろしくお願いします。』
高く澄んだ声で、恥ずかしそうに自己紹介をした雫だったが、話してみると気さくで、頭も良く、術式の使い方も高度で、意外に大食いで、運動神経もかなり良くて…
あっという間に昔からの馴染のように溶け込んだ。
皆、雫の笑顔に元気づけられ、癒やされていた。
が…しばらくして雫はおかしくなった。
朝からの授業に遅刻して来たり、来てもずっと寝ていたりした。目に見えて痩せ、注意散漫になり、遂には任務中に大怪我を負ってしまった。
「雫はしばらくお休みするからね。」
五条先生の真剣な顔つきに、俺達は益々心配になったが、家から通っていた雫に会う術がなかった。
仲間が傷ついていても毎日は容赦なくやってくるし、呪霊が減るわけでもない。