第4章 アングレカム【五条悟・教師編】
「残念…おあずけだね。」
身なりを整えると雫の部屋を出た。
「はぁっ…はぁ…五条先生…雫は?」
「…中にいるよ。恵、少し話そうか。僕の部屋で。」
恵を一瞥して指示すると、素直に僕の後をついてきた。
ガチャリ…
「入って。」
「………」
「座りなよ。」
「…五条先生ですよね…?」
「何が?」
「雫にあんな服渡したの。」
僕を鋭い目つきで見つめる恵。
へぇ。久しぶりだね、その目になるの。
高専に入って随分丸くなったと思ったのに、面白いじゃない。
「なーんの事かな?」
「…とぼけても無駄です。雫は誤魔化して趣味とか言ってたけど、初めて着たとも言ってました。
息ができないくらいウエストも締めてしまって…危険でした。
その後すぐに先生が入って来た…
偶然とは思えません。」
「えー、だったら何?
僕らが秘密にしてるだけで、恋人同士かもしれないじゃない。」
「服の事は五条先生だって認めるんですね。」
「さぁ?」
「付き合っていないのもわかってますよ。」
「……」
「あんな服を渡しているのにキスもしていない。さっき雫にキスしたら…ファーストキスだって言ってました。」
「へぇ…」
それは初耳だ。
完全な生娘だったんだね。
「そんなの、わからないじゃない。恋愛なんて十人十色。皆みんなが恵の考えるセオリー通りの恋愛の仕方なんて、してないかもよー?」
おどけて見せる僕を、冷たい眼差しで見つめる恵。
「…何で雫なんですか?」
「何…?」
「ガキの頃から先生の女性関係を死ぬ程見てきました。
女性に困る事なんてない先生が、何で雫に執拗に関わるんですか?」
「…ソレ、恵が言うの?恵だってヤっては捨て、ヤっては捨てしてきたじゃない。いつだったかな?恵のアパートから泣きながら出てきた子をなぐさめてあげた事だってあったんだから。」
「…っ…昔の話でしょう。」
「恵…」
今度は僕が同じ目で恵を見つめ返す。
「本気なの?」
「…本気です。だから先生も本気なら、正々堂々と戦います。
けど遊びなら…雫から手を引いてください。」
やだねぇ、男の顔になっちゃってさ。
「ふふっ、決めるのは雫だからね、こればっかりはねぇ。」