第4章 アングレカム【五条悟・教師編】
「…そうなのか。メイド服…っていうんだったか?
人の趣味ってわからないもんだな…」
『…っ恥ずかしいから…誰にも言えなくて。ちょうど時間もあったから着よっかな、って時に恵が来ちゃったの…』
「…服広げてたのに、俺を入れたのか…?」
『忘れてて…出したの…』
かなり苦しい言い訳…
動画の方に気を取られて服の存在を忘れてたとは、絶対に言えない。
「着てくれ。」
『へっ……?』
「雫が着てるところ、見てみたい。」
スン、とした真顔でとんでもない事を言い放つ恵。
『え、嫌だよ…恥ずかしいよ。
人に見せるためのやつじゃないし…露出高いし…』
「着ないなら虎杖や釘崎に雫の趣味を話す。」
『…っ…何で!?』
「どうするんだ、雫。」
『っ………』
悠仁にバレるのは、わりとどうでもいい…けど、野薔薇にはバレたくない。だって…これは私の本当の趣味じゃない。誤解されるのは嫌だ…
『…着るよ。』
渋々服を掴んで、トイレに入る。私の為に作られたのかと思うほどサイズはぴったりで驚いてしまう。下着を着けるとちょうど見えてしまうので、ホックを外して着ていた服の中にブラをしまった。
『これで合ってるのかもわからないのに恵に見せるなんて…』
ガチャ…
トイレから出ると、恵は座ってテレビを見ていた。
『恵…着たよ……』
side 伏黒
よりによって五条先生の授業中に寝息をたてて眠る雫…
補助監督や窓が先生の時は任務が大変だったからとか、疲れているからとか言えば、寝ていても見なかったことにしてもらえるが、五条先生だけは別だ。
言い訳は一切通用せず掃除と反省文が必須となる。
俺達は何とか雫を起こそうと声をかけたが完全に眠っていて起きない。
こんな事は入学して以来初めてだった。
昨日は確か母親の病院に出かけていったはず。
あまり調子が良くないと言って、元気がなかった。
何か…あったのだろうか?
とりあえず後で雫にノートを持って行ってやろうと、いつもより丁寧に板書を写す。
"恵、ありがとう。"
雫の微笑む顔が頭に浮かび、それだけで口角が上がってしまう。
雫に対し、気になる、という言葉以上の気持ちがある事には自分でも気付いていた。