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【呪術廻戦】甘く愛される短編集《R18》

第3章 ヘブンロード【七海建人・高専編】



「ははっ、どうやろうねぇ?死んだ事ないから確かめようがないけどなぁ…でも実際、死んだ人間が夢に出てきた人が何人もおってねぇ。なーんとなし、私らもそれを信じて、毎日干潮になると渡っとるんやけどね。」

「おい、お前はすぐに観光に来とる衆らにペラペラ喋って…春にこん人らにヘブンロードを勧めたん、ワシや。諸々バレてもうたやんか。」

「えっ…!そうやったん⁉ごめんなぁ、堪忍な。今聞いたこと、忘れてな。全部おばあちゃんの妄想や。ヘブンロードは願い事が叶う、素敵な道やでぇ。」

「アホか。」


『ふふっ…夫婦漫才みたい。』

微笑む雫を見つめ、目を細める。

やっと笑った…

手を振りながら私達を見送る老夫婦に頭を下げながら、島が見える海岸まで進む。

「満潮ですね。次に道を渡れるのは確か、正午過ぎなはずです。」

『…………』


「夢で灰原に会ったんですか。」

『…っ…何で…』

「態度を見ていればわかります。何か…言っていましたか?」



『……………"生きて。七海と一緒に。約束だよ"って。』

「…灰原らしいですね。」

『建人……私達、生きてまた…ここに来よう。
何度でも…』


頬を伝う雫の涙を、人差し指の背で拭う。

「勿論。」


最後まで私達を心配した、心優しい仲間が最期に遺した言葉を2人で守ろうと誓い、しばらく海に浮かぶ小さな島を見つめた。



ーーーーーーーーーーーーー



何日も滞在したように感じる島。
決して近くないこの島に、次に来られるのはいつだろうかと、荷物を持ってフェリーに乗り込もうとしたその時、突然温かく強い風が吹いた。



「…っ……」

『建人?どうかした?』

「いえ…今…何か聞こえましたか?」

『え?人の声はたくさん聞こえるけど…どうしたの?何か聞こえたの?』

「……なんでもありません。」




"七海、雫を頼んだよ。"




私は人の溢れかえるフェリーの中で、雫の小さな手をそっと握った。



離れないように。



離さないように。







end.
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