第3章 ヘブンロード【七海建人・高専編】
雫の部屋を後にし、男子寮に戻る。
七海の部屋のドアをノックすると、少し経ってから扉が開いた。
「出るのおせーよ、ダサ男。」
「…明日から遠方任務なんで、その仕度をしていました。何ですか?こんな遅くに。」
「何ですかじゃねぇよ。お前さ、何やってんの?せっかく俺が助け舟出したのに、前より状況悪くなってんのは何で?」
「…私のせいです。」
「んな事わかってるよ。」
「…雫に話しかけても無視されていて…このままではと思いながら、どうすることもできずに、ここまできてしまいました。」
「怒らせるようなことしたわけ?」
「…言いたくありません。」
「手ぇ出したとかじゃないだろ?」
「…だから言いませんて。」
「何だ、マジか…それは意外だった。で?」
勝手に話を進める俺に観念し、七海は深く溜息をついて答えた。
「…なぜキスを…したのかと泣かれて…」
「うん、それで?」
キスしたのか…と、いちいち反応せず俺は七海が開けたドアをグッと掴んだ。
「答えられずに今に至ります。」
「はぁー?七海お前…ダサ男じゃない。ウジウジ男のクソ男だ。」
「わかってますよ…」
「ったくお前も雫も…」
俺はガシガシと頭を掻きながら七海を見つめた。
「五条さん…明日から灰原と任務に行くんです。そこで灰原にはきちんと話して…帰ってきたら雫に思いを伝えようと思っています。」
「…何だ。きちんとプランあんじゃん。」
「それはそうでしょう。このままでいいとは誰も思っていませんから。」
俺はドアから手を離した。
「お前は真面目すぎるのが玉に瑕だよな。人にも自分にも。バランス悪いっていうか器用じゃないっていうか…
まぁでも、安心した。上手く言おうなんて思わなくていいんだからさ。ちゃんと伝えろよ、七海。」
同じ階にある自室へ、ゆっくりと向かいながら考える。
雫は俺が…いや、俺と傑が特に気にしている女の子なのは間違いない。
あいつが中3の真冬…川の深い方へ真っ直ぐ歩いていくのをたまたま傑と一緒に見つけ、驚いて助けに入った。
冷たくなって無表情で震える雫から呪力を感じ、色々と調べると両親が窓だったことがわかった。