第3章 ヘブンロード【七海建人・高専編】
side 悟
「…何あれ?」
「この間…七海と雫が外で何か言い合っていたんだ。雫は泣いていて、七海も怖い顔をして、雫の肩を掴んでいた。絶対に何かあるのに適当にかわされてしまってね。
雫も硝子に何も言わなかったみたいだよ。」
「で、アレね…?」
数日前に灰原と雫が別れたのは聞いた。
あの2人が気まずいならまだわかるが、灰原と雫は特にわだかまりはないように見える。
問題は…
「雫と七海、本当にどうしたのかな。」
一言も喋らず、目も合わせない2人。
仲間の間であの態度では任務に支障をきたす…
誰かを危険な目に遭わせる可能性があるなら見過ごすことはできない。
「ったく…何やってやがんだ。」
夜の21時を過ぎた頃、雫の部屋のドアを乱暴に叩く。
『…はい。…っ五条先輩……』
「あのさぁ…痴話喧嘩なら他所でやってくれる?」
『………』
「お前らの為に誰かが危険な目に遭うのは見てられねぇからな。普通にできないなら任務から降りろ。邪魔だ。」
『…すみません。』
何の事かすぐに察した雫は、申し訳なさそうに下を向く。
「……ていうのは呪術師としての先輩の意見。で、こっからは五条悟としての意見。…どうしたいの?雫。七海とのこと。あ、隠しても無駄。俺には全部わかってっから。」
『…どうもしないです。今までと同じ…』
「灰原のため?」
『………』
「残酷な事するね、お前は。
選択できないのは灰原の為じゃないでしょ。自分の為だよ。自分が3人で、今まで通りいたいだけじゃん。そんなのとっくに無理なのにさ。悪者になりたくないから選べないだけだろ。」
言い過ぎた。
雫の頬を涙が伝う。
『五条先輩の…言う通りです…ぅっ…自分のために…このままでいるんです…』
真っ直ぐな黒髪に沿わすように頭を撫でる。
「…やっと見つけた居場所だからな、お前にとって。理解できなくはない。けど灰原と別れた時点で答えはもう出てるんじゃねぇの?どう選択しても、誰かは傷つく。
1つ言えるのはさ…後悔だけはするな。お前が辛そうにしてるのが、灰原にとっても七海にとっても1番の不幸だよ。」