第3章 ヘブンロード【七海建人・高専編】
「七海、からかって悪かった。
お前が変わったっていうのは、いい意味じゃない。辛そうに見える。呪力に迷いがあって、こう…波みたいなんだよな。」
「っ…」
「当たり?でさ、最近お前と同じような呪力してんのが雫。」
「雫が…?」
「んー。何を悩んでんのかまではわかんねぇけど…
ほらアイツ、色々抱えてっからそれかな?って最初思ったんだけどさ、前より何か…良くねぇんだよな…」
「五条さんそれは…確かな情報ですよね?」
「あぁ、俺の六眼にかけてな。何度も言ってっけど理由はわかんねぇよ?」
最近調子が良いと言っていたのは、周りに心配をかけないための嘘…?感情を隠すのが普通になっている雫ならありえなくはない。
何か辛いことがあるのだろうか。
私達に言えない事…?
「五条さん…」
「ん?」
「…ありがとうございます…」
「ははっ、こりゃ雨降るね…」
空になった缶を捨て、雫の部屋に向かった。
コンコンとドアを叩くと、奥から高い声が聞こえる。
『はぁい…って建人…?!』
「雫、少し話せますか?」
『え…うん。どうしたの?何か約束してたっけ?』
「いえ…約束は特に。」
何も考えずにここまで来てしまった自分自身に一番驚いている。しかも五条さんの言う事なんて、信じられるかわからないというのに…
『ふふっ、とにかく入って。今課題やってたんだ。』
雫の部屋には何度も来ているのに何でしょう、この緊張は。一人で来たのが初めてだからでしょうか。
『はい、紅茶。この間、建人が勧めてくれたの、凄く美味しくて沢山買っちゃったよ。教えてくれてありがとう。』
ニコニコと、紅茶を啜る雫。
特に変わった様子はないように思うが…
「雫…最近何か悩んでいることはないですか?辛く思っていることとか。」
『っ……えっ…なっ悩み…⁉』
雫の手からカップが滑り落ち、熱い紅茶が床に飛び散った。
『っ…あつっ…』
「…っ…何してるんですか」
拭くものを探すと背後にティッシュの箱を見つけ、早く渡そうと振り返ると、箱を目掛けて突進してきた雫とぶつかる。
『えっ……』
「…っ……」