第3章 ヘブンロード【七海建人・高専編】
「…けど良かったのか?
雫がいない所でこんな大事な話をして…」
「…ふふ、七海は本当に優しい奴だよね。
雫が言ったんだ、僕から七海に話してくれって。
七海にまだ話してなかったこと、気になってたみたい。」
「…そうですか。」
「七海…さっき信用してなかったから話さなかったんじゃないか、って言ったけど…それは違うよ。」
「……?」
「信用してたから、言えなかったんだと思う。
本当は頑張って乗り越えて、強い自分になりたいって雫言ってたから…」
「…………」
「僕たちは呪術師だから、いつどうなるかわからない。だから僕にもしもの事があったらその時は七海…
雫の事頼むよ。」
真剣な瞳が私を見つめる。
「嫌です。仲間に何を頼んでいるんだ、縁起でもない。それに…好きな女性を人に任せるなんて気が知れない。」
はぁー、と溜息をつくと、灰原はそうだよね、と笑った。
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帰路につくためフェリーに乗り込むと、灰原が高専に連絡を入れると席を立った。私は灰原を見送り、意を決して雫に声をかけた。
「雫…」
『建人、朝から気づいてたんだけど…
目の下のクマがやばい…眠れなかったの?私のせいだったらごめん…』
「大した事ありません。その…調子はどうですか?」
『いや、建人こそ体調大丈夫なの?その顔で大した事ないって言われても説得力ないし。』
ははっ、と笑う雫はいつもの雫だった。
「悪かったと思っています。」
『…え?』
「知らなかったとはいえ、自分の価値観や一般論を押し付けていた。」
『そんなことないよ…』
「それから……乗り越える必要なんてないと思いますよ。」
『………』
「雫…人の死は、乗り越えるものじゃない。忘れるものでもない。背負っていくしかないんです。」
『…うん。』
「灰原が一緒に背負ってくれるでしょう。けど…」
雫を見つめて言った。
「私にもできる事があるなら言ってほしい。
子供じゃないとか、ああしろとかこうしろとか、おかしいとか違うとか…もう2度と言いませんから。」
『…ありがとう。』