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【呪術廻戦】甘く愛される短編集《R18》

第3章 ヘブンロード【七海建人・高専編】



遺産目的に沢山の大人が雫を引き取りたがり、争ったこと。
引き取られた先で名前を呼ばれず育ったこと。
気に障ることがあると折檻と称して虐待されたこと。
笑えなくなった事を気味悪がられ、施設に入れられたこと。

「……っ…」


到底信じられなかった。
今の雫の姿からは想像できない過去。


「施設に入れられたことは良かった、って思ってるみたい。喋れなくなって、笑えなくなった雫を支えてくれた大事な場所だって。挨拶とか、友達の大切さも、全部教えてくれたんだって。家族同然みたいだよ。」

「………」


"あまり誰彼構わず挨拶しないことです"


「灰原私は…雫の何を見ていたんだろうな。」

雫が心配だなんて事は建前で、本当は自分が雫を他の男と関わらせたくなかっただけ。
醜い独占欲を正当化しようとしたその行為は、ただの自己満足に過ぎなかった。

「どれ程温かい場所があってもさ、寂しさや辛さが消えるわけじゃないと思うから…」

灰原は押し黙り、私をまっすぐに見つめた。

「支えたいんだ。雫のこと。僕が全力で。」

嘘偽りの一切ない、力強い眼差し。
あぁ、本当に…


「幸せだな。」

「…え?」

「灰原が側にいてくれて、雫は幸せだと思う。」

「えっ…やだなぁ、何だよ七海、急に。」


照れ臭そうに笑う灰原を見て思う。

私もこの気持ちに一切の偽りはない。雫の過去を知り、雫を支えているのが灰原であり、私ではない。それが本当に…良かったと思った。
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