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【呪術廻戦】甘く愛される短編集《R18》

第1章 愛しい君【夏油傑・高専編】


わかってる。自分でも、らしくないって。
ずっと冷静だったのに、あの子の言葉で頭に血が上ってしまった。

傑を悪く言われたらから…なんて。
それはただの建前で。

『傑の彼女か?って…聞かれたの。』

「え?」

『傑、あの子と会った事あるでしょ?多分あの子…傑の事が好きなんだよ。』

大きく目を見開いてポカンとする傑。
あ、と何かを思い出したかのように口を開け、こめかみを指で掻く。

「あー……あの子か。以前悟と一緒によく行っていたケーキ屋で、店員さんに声をかけられたんだ。突然付き合ってくれ、って言われて彼女がいるから、と断ったんだけど。それ以降は全く行かなくなっていたから気づかなかった…え、もしかしてそれで…?」

『………』

相変わらず自覚ないな、と思いながらずんずんと前を歩く。
性格はともかく、モデル並の容姿やスタイルのあの子を忘れるなんて…

傑は任務先でも、しょっ中女の子から声をかけられては断っている。

こんなにモテる傑の彼女が何故私なのか…
自分自身が一番疑問に感じている。

あの子が言ったことがその通りすぎて、思わず嫌なことを言ってしまった。
自信のないウジウジとした性格。どこにでもいる普通の顔。スタイルがいいとは言えない体。

半年前に傑に告白された時は、嬉しいというより、なぜ?という疑問の方が大きかった。優しくて頼りがいがあって、誠実で、先を見通す力があって。その上強くて顔もカッコよくて責任感もあって…

100点満点どころか200点満点の傑が彼氏である事が信じられない事なのだから、こんな目に遭うのはむしろ普通の事のように思えた。

鬱陶しいと思われたくなくて…どうして私が好きなのか、どこが好きかなんて、聞いたことがなかった。


たまたま身近にいたから…?


硝子は高嶺の花だから…?


傑は私と付き合っていて、もっと素敵な子がいないかと考えることはないのかな…?



私…傑の隣にいて…いいのかな……?



「雫?」

『…っ………』

傑に顔を覗かれると同時に、大きな涙の粒がぽろぽろと頬を伝った。

「っ…雫……ごめん。私のせいだね。私のせいで嫌な気持ちにさせて、顔に傷までつけさせてしまって…何かお詫びさせてくれないかい?行きたい所や欲しい物、何でも…」

大きな体で包み込み、頭を支える傑の胸を、そっと押した。
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