第2章 青く澄んだ空【五条悟・高専編】
「フレンチとか懐石とかって見た目華やかだし、味も美味いんだろうけどさ、毎日はいらねぇじゃん?
やっぱ飽きるんだわ。」
『…うん』
「美男美女も3日で飽きるって言うだろ。
まぁ俺は飽きのこない美男だけどさ。」
『………うん』
「その点学食のラーメン、カツ丼、焼き魚に煮物、飽きないよね、何度食っても。素朴で毎食でも食える。
雫もさ、そんな感じ。」
『素朴って…こと?』
「安心すんだよ。」
『それは……どうも…ありがとう』
「何だ、その歯切れの悪ぃ礼は。」
『いや、だって自分はフレンチや懐石です、お前は学食です、って言われて、わぁ、うっそ、ありがとう、テンション上がる!ってなる…!?』
「そこだけ切り取るなアホ。素朴で飽きなくて安心できるとまで言って褒めてんだぞ、この俺が。」
『その褒め方が何か微妙なの!』
「お前が自分のどこがいいのかって聞くから、こんな話になったんだろうが。」
『何も食べ物で例えなくてもよくない?!』
「…ぷっ、んな怒んなよ。ぶはは」
『怒ってないし。よく笑えるよね、ホント悟はデリカシーのかけらもない男。』
「あぁ?!その生意気な口聞けないようにまた犯してやろうか…?」
俺は雫の細い両腕を掴んだ。
『やっ、ごめん…ごめんね…』
「冗談だろうが」
雫を抱き寄せ、包みこんでこめかみに口付けた。
どこを好きになったか…か。
本当の事を言うことは多分ない。
『…悟?』
離れようとする雫の頭を軽く押さえ、つぶやいた。
「…ゆっくりでいいからさ、また笑ってよ、雫…」
お前が何だか勝手に背負おうとしているものを、俺も一緒に背負って、疲れた時は疲れたね、って笑いながら休んでさ、また歩きだして休んで…
そうしているうちにいつかお前が何を背負ってたんだか忘れるくらい、お前を側で支えて、力になってやる。
『…悟…苦しい』
「あ、ごめん。」
いつの間にか雫を強く抱きしめていたようだ。
『ありがとう。悟の気持ちは…よくわかったよ。』
「読んだ?」
『…読まなくてもわかるよ。大事な仲間なんだから。』
「仲間ね…」