第2章 青く澄んだ空【五条悟・高専編】
「ごめん…調子乗りすぎた。」
俺は昼過ぎまで寝ていて、雫が隣にいることを確認したくて手を伸ばすと、ぎゅっと腕を抓られた。
「痛って…」
驚いた俺はパッチリと目を冷ますと、雫が俺を睨みつけていた。
『体痛い…昨日どのくらいシたの…?』
そういうわけで俺は服を整え、ベッドの上で正座して雫に謝っている所だ。
「お前が可愛すぎてさ…止まんなかった。ごめん。」
『…………』
「怒ってるよな…」
『………色んなとこ痛いけど、久しぶりに…
よく眠れた。ずっと悪夢ばっかり見て、飛び起きて…眠れない事が続いてたから。そこはありがとう……』
体育座りをする雫の視線は俺から自分の足元に移された。
『昔の夢を見たんだ。
皆で海に行ったり、流し素麺食べたり、任務と称して旅行みたいにはしゃいだり…楽しかったよね…』
また泣くんじゃねぇか?
そう思ったが泣いてはいなかった。
『…傑の姿に絶望したわけじゃないんだ。
そんな権利…私にはないよ。』
雫は俯いて肩を揺らした。
『けど何だろう…?色々考えたけど、こうなったのは傑だけが悪いんじゃなくて…
やっぱり私が…傑の一番近くにいたのに…』
「雫…」
震える雫の体を抱きしめる。
「お前のせいじゃない。そうだろ?」
『…っ…わかんない。』
「お前のせいなら俺のせいでもある。硝子のせいでも、先生のせいでも。皆のせいだ。一人で抱えんな。」
お前が読んだ通り、俺だって後悔してる。
たった一人の親友が人を殺し、呪詛師になった。
何がどうなってそうなったんだ、って初めは思ったけど、きっとどこかにサインがあったんだろうし、傑は苦しんでいたのかもしれない。
それに気付かなかった、ってんなら俺だって同じだ。
『…悟…ありがとう。』
「いや…」
何もできてねぇよ、俺。
抱きしめていた体を開放し、雫と向き合って胡座をかく。
『…聞いても…いい?』
「ん?」
『何で…私の事好きって…思ったの?』
雫は俺を見ずに顔を赤らめながら膝を抱える。
「………高級料理ってさ。」