第2章 青く澄んだ空【五条悟・高専編】
俺はベッドに上がり、雫の両手を強く引っ張るとベッドに縫いつけた。
『っ…痛……』
「今からお前のこと抱く…
嫌っつってもやめねぇ。だから泣きやむ必要なんてねぇよ。自分勝手で最低な俺のせいにしたらいい。」
サングラスを外して床に投げ捨て、真剣な顔つきで雫を見下ろすと、驚いてカタカタと震えているのがわかった。
『…わかっ…た…泣き止む…離して…悟…』
「無理すんな。
泣き止めてねぇし泣き止む必要ねぇっつったろ。」
頬を伝い続ける涙を拭ってやると、雫が俺の胸に触れた。
俺は…どうせ押すだけだろうと油断していた。
パチっ…
「…っ…」
side 雫
………何?今の………
普段と違う悟が怖くて、友達には絶対に使わないと約束していた術式を使った。
「……やられたな…読んだの?」
私の術式は読心呪法。自分の体の一部に相手の体の一部が触れていれば相手の術式、記憶、思いが一瞬にして読める。
長く触れていればいる程、よりたくさんの情報が映像のように流れてくる。
螺旋状であったり、散りばめられていたり、びっしりと敷き詰められていたりする記憶や思いは、悟の場合フラッシュカードのように瞬間的だった。
涙の粒が止めどなくポロポロと溢れ出す。
『さ…とる……』
「…何で泣くんだよ」
私は何て浅はかで
自己中心的で
鈍感な人間なんだろう。
『ごめっ…悟…』
「…何が?」
悟の心の内には五条家の人達、先生、傑、硝子、たくさんの人の顔があった。
けれど一番多く悟の心の中にいたのは……
私だった。
硝子や傑と笑い合いながらゲームをする私。
体術練習に汗を流す私。
授業中、頭を掻きながら前を見つめる私…
『…ずっと……知らなくて…』
「ハっ……バレたか。」
自嘲気味に笑い、私の涙を人差し指で拭う。
それよりも…
『傑の事…一番堪えてるの…悟なのに…』
悟に触れた時、鋭い痛みが胸を突き刺した。
底が見えない程大きな後悔…
深い深い哀しみ…
深く暗いところに、悟が1人、ぽつんと座る姿に胸が抉られた。
「自分の意思でどうしようもない事なんてさ、生まれてから今まで万とあったし…そういう時はさ、適当に蓋すりゃいんだよ。」
『悟……』
「慣れりゃいんだよ。』