第2章 青く澄んだ空【五条悟・高専編】
「大事にしたくてもできない事だってあるし、最強っつったって、呪術師やってたらいつ死ぬかもわかんないよね。知らないうちに傷つけることだってあるだろうし。
だから…
わからない、っていうのが答え。」
「…初めからお前に任せていたら良かったな。」
「は?」
「傑は俺に言った、絶対雫を幸せにすると…
だがこの世に絶対、必ずなんてない。
そう口にする奴の事を、初めから信用してはいけなかった。」
「……それはどうかな。」
俺は立ち上がり、夜蛾先生の方を向いた。
「雫はさ、傑といて幸せだったと思うよ。
近くで見てたからそれは保証する。幸せだったからこそ、好きだったからこそ受け入れられなくて傷ついてるわけじゃん。他人の事であそこまで落ちるってさ…
愛以外の何があんの?」
陽は沈みかけ、薄暗くなっていた。
俺は早足で石段を降り、食堂に向かった。
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コンコン
扉を叩くも、案の定返事はない。
ガチャ…
ノブに手をかけると鍵が掛かっていないのがわかり、勝手に扉を開け、中に入る。カチャカチャという食器の音が響いた。
人が入ってきたことがわかったのか、雫は頭までタオルケットを被っている。
「何でいつも鍵かけねーの?危ねぇじゃん。他の補助監督の奴らとか、1、2年もいんだぞ。」
ベッドから小さな声が聞こえる。
『傑が…いつでも入ってこられるようにしてたの。
それを知ってる他の子も、変な事しに入ろうなんて思わなかったはずだから…』
「………」
『ご飯…ありがとう。けど食べられそうにない…』
「いい加減食わねぇと倒れんぞ。
何日まともに食ってねぇんだ。」
消え入りそうな、更に小さな声が聞こえる。
『…どれくらい食べなかったら…人って死ぬのかな…』
うっ…グスっ…という声が聞こえ、俺は頭に血が上ってタオルケットを剥ぎ取った。
「…っいつまでもふざけたこと言ってんじゃねーぞ。
起きろっ…」
『やめて…返して…』
団子虫のように横向きに丸まり、雫は顔を覆っている。
「返さねぇよ。」
『傑、どこ…行ったのかな…』
「さあな。」
『…傑に会いたい…』
「…………」
『うっ…涙ってどうしたら止まるの…?教えてよ悟…』
「………」
ギシっ…
『……っ…』