第2章 青く澄んだ空【五条悟・高専編】
追いかけようと身を乗り出すと足がもつれ、バタンと倒れこんだ。
「雫っ…」
悟が駆け寄り、怒鳴りつけるように叫んだ。
「…傑っ…!テメェのことを雫はずっと…信じてた。俺だって…」
「進むべき方向、見ているものがもう、私達は全く違うんだよ、悟。」
「…っ……」
歩いて行こうとする傑に対し、悟は即座に術式を繰り出す構えをとった。
『悟っ…やめてお願い……』
攻撃を止めさせようと、必死に悟の足にしがみついた。
「殺すなら殺せ。…それには意味がある。」
「…っくそ……」
悟は構えるのを止め、泣きじゃくる私を抱きしめ続けた。
ーーーーーーーーーーーー
side 悟
「…………」
「なぜ追わなかった?」
石段に座る俺に、夜蛾先生が声をかけてきた。
「…それ、聞きます?」
「いや…悪かった。雫は…?」
「死ぬ程落ち込んでる。このまま死んじゃうかもよ。」
「……悟、雫を頼めるか?」
「はっ…あの時と真逆の事言うじゃん先生。勝手だねぇ…」
"雫には手を出すな"
忘れもしない、先生は俺と傑にそう言った。
ガキながらに先生の思いを察した。
呪術師と一緒にいりゃ、娘が不幸になる。そう思う親の気持ちは自然だ。
雫は高専を卒業したら窓か補助監督としてやっていく。入学を許可してもらう代わりに先生から出されたその命令も、飲んだと聞いた。
先生の言葉があったから俺は雫への気持ちに蓋をしていた。
なのに…
「…先生、傑と雫が付き合うことになった時さ、どう思った?」
「…アイツは言いつけを守れずに申し訳なかったと俺に頭を下げに来た。
お前には悪いが…いい奴を選んだと思った。傑なら安心だと…」
「はっ……だよね。」
「勘違いするな、お前が嫌いなわけじゃない。」
「…わかってるよ。」
「だが俺の目は節穴だったってことだ。結果的に雫はこうなった。」
「結果論だけどね…」
「お前は雫を幸せにできるか?」
「…………」
「俺がお前の気持ちに気づかないとでも思ったか?」
「…ははっ…パパは怖いねぇ。」
「どうなんだ悟。」
「………わかんないよ。」
石段の数段下を見つめながら、俺は口を開いた。