第2章 青く澄んだ空【五条悟・高専編】
ガツっ
「っ雫さんっ…!すみません。大丈夫ですか⁉」
午後の体術の訓練中、灰原が繰り出した回し蹴りがモロに雫の腹に入り、ゴホゴホと咳き込む。
『…大丈夫、ごめん灰原くん。私がボーっとしてたから…』
「そうだな、今ので死んだな。
呪霊も呪詛師も手加減する事なんてありえねぇんだから。」
俺の嫌味に反論することなく、黙って立ち上がる雫。
「どこ行くんだ。」
『トイレ…』
トイレに向かう雫の後ろ姿は1週間前とは明らかに違っていた。一回り小さくなり、覇気がなくなっている。
まあ無理もない。
恋人が突然、非術師大量殺人の容疑をかけられたまま行方不明になり、処刑対象になったのだから。
雫はそんなはずない、話さなければわからない、の一点張り。強気な態度をとっている癖に、食事が喉を通らず、夜は傑を探し回る日々。体はどんどんやつれていく…
ったく…何してんだ…コイツも、アイツも…
体術訓練が終わり、シャワーを浴びて更衣室で着替えを終えると、着信が入った。
電話の主は硝子だった。
硝子の話を聞くや否や俺は更衣室から飛び出し、女子更衣室に飛び込んだ。
雫も着替えを終えていたが、突然飛び込んできた俺を怪訝な顔で見つめた。…が、俺の焦る様子から全てを悟ったらしかった。
『っ傑……いたの?!』