第5章 トライアングルのち…【虎杖悠仁&伏黒恵・高専編】
「……僕はさ、雫…
昔あった出来事を通して、一つ決めた事があるんだ。」
頭を優しく撫でる先生。
「間違いを犯した人間を、放っておかないって。
人間は間違うよ。でもまたやり直せる。
今の僕はその力を信じているし…」
優しい、優しい声が降ってくる。
「見限ったりしない、絶対に。」
『………何か…あったんですか?昔。』
「べーつに?」
ふふっ、と笑った先生は、少し寂しそうに見えた。
『先生……』
「なあに?」
『多分ですがその…今回の、妊娠しないと思います。
生理終わったばっかりですし…』
「えっ、そうなの…!?」
ちゃんと教えてよー、とムキになる先生。
『子供ができていなくても、あの…
一緒に……いてくれますか?』
「…当たり前でしょ。やぁっと素直に言ってくれたね。」
嬉しそうにきゃっきゃと笑う先生は目を輝かせて言った。
「そうと決まれば励もう、雫。
子作り再開!」
『ちょっ…話聴いてました?
今はできないって言ってるじゃないですか。
それに、そっちはずっと先でいいです。先ずは一人前の呪術師にならなきゃ、胸を張って先生の隣を歩けませんし、てか…なんで子供っ…!?』
迫ってくる先生の顔やら頭やらを押さえつけた。
押さえつけられたままの滑稽な姿勢で、先生は静かに口を開いた。
「…自分の子供一人も育てられない大人が、なーに人材育成なんて言っちゃってんのかな、って…
呪術界のトップでも父親として落第なら、それって人間としてどうなんだろうね…」
『先生…』
なーんて、テヘペロ、とおどける先生。
間違って
遠回りして
自分の気持ちに正直になる事を選んだ。
"間違ってもまたやり直せる"
先生にそっと抱きつくと、
少し驚いた大きな体は、それに応えるように、しっかりと抱きしめ返してくれた。