第5章 トライアングルのち…【虎杖悠仁&伏黒恵・高専編】
思いは通じ合ったけれど…
泣く程俺を求める雫の前から、突然いなくなったら…
また雫を悲しませ、雫の心に傷を残すことになるかもしれない。
"…寂しくてたまらなかった"
「…っ……」
俺は雫の額に口付けると、優しく手を解き、ゆるゆると服を着た。
雫の頭にそっと触れると、振り返らずに雫の部屋を後にした。
side 雫
目覚めると悠仁の姿はなく、床に横たわっていたはずの体はベッドにあった。
体はさっぱりと拭かれ、丁寧に薄い布団がかけられていた。
布団をぎゅっと抱き締めながら思った。
結局、抱かれている間も、悠仁は口にはしてくれなかったな…
"雫、好きだ…"
あの日の言葉が嘘ではないことはわかった。
わかったけれど…
なら、なぜ口にしてくれないの?
もう恵とはいるな、って。
ずっと一緒にいよう、って。
わからない…
悠仁の事が。
体に残った気怠さと腰の痛みが昨日の情事を物語っており、目を瞑るとまたトロトロと眠りについてしまった。
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side 虎杖
「おい…アタシはコソコソする奴が嫌いなんだよ。
皆も気ぃ遣うから正直に答えろ。
嘘ついたりしらばっくれたりしたら簪お見舞いすっからな。」
雫はまだ教室に来ていなかった。
よく考えたら一昨日は自分が抱き潰し、昼に伏黒、また昨夜は自分が雫を抱いた。体を酷使しすぎている。
後悔の念がよぎった。
「何の話だ。朝っぱらからから騒々しい奴だな。」
伏黒が気だるそうに口を開いた。
「昨日雫の部屋からベッドが軋む音、…そういう事してる声が聞こえた。昼間と夜の2回も。
ったく盛ってんじゃねぇよ。つーか、ちゃんとアタシらにも説明しとけや。で、どっちだよ?雫と付き合ってんの。」
「「………」」
俺も伏黒も言葉を失った。
釘崎の部屋は雫の部屋の隣。当然声や音が漏れていてもおかしくない。
だが俺も伏黒も雫と付き合ってはいない…
夜、という言葉を聞いて瞬時に伏黒が俺を見た。
「…あのさ、釘崎……」
どうやってごまかす…?