第5章 トライアングルのち…【虎杖悠仁&伏黒恵・高専編】
ガチャリとドアを開けると、学生証を握った悠仁が立っていた。
『悠仁……どうしたの…?』
「良かったー、起きてて。こんな時間にごめんな。って、あれ?泣いてたのか…?」
『……』
「伏黒と…ケンカでもしたの?」
遠慮がちに言う悠仁。
『…っ……』
悠仁から恵の名前が出たことにカッとし、思わず睨みつけた。
「えっ、いや……ごめん。
今日帰ってきた時さ…ちょうど伏黒と雫がその…キスしてただろ?見るつもりはなかったんだけど…」
だから…と悠仁は続け、
「二人が付き合ってるなら、昨日の事、直接伏黒に謝るよ。知らなかったから…ごめん、俺雫にあんなこと…」
バシッ
「…!?…ってぇ…雫…?」
バンッ
気付いたら思い切り悠仁の肩や胸を叩いていた。
「ちょっ…何だよ…!?雫?どうしたの!?」
私の両腕を掴んだ悠仁は、わけがわからないというように、焦って顔を覗き込む。
涙が次から次へと溢れ出た。
『……っない…』
「へっ…?」
『付き合ってないっ……恵は慰めてくれただけ…
わっ…私が今日失恋したから…』
嗚咽が止まらず、抵抗すると悠仁は腕を離した。
「は…?失恋…?雫が…?
いや、てか…雫、好きな奴いたんだな。なら尚更、俺が昨日したこと、やっぱ許されねぇじゃん…」
動揺する悠仁に苛立ちはピークに達し、冷静になって言った。
『ふふっ…そう…いたんだ、好きな人。
……私の目の前に…』
「…………え?」
『学生証、ありがとう……』
これ以上は悠仁の顔がとても見れない…
悠仁の手から学生証を奪うようにひったくると、扉を閉めようとした。
「待ってっ…」
ドアの入口に足を入れられ、うまく扉が閉まらない。
『…っ…どいてっ…』
扉を閉めようにも悠仁の足を挟んでしまうことになり、閉められない。
ギイっ…
次の瞬間
悠仁の腕の中にすっぽりと抱きしめられた。
『っ…離し…』「雫…」
「間違いじゃないならさ…雫の好きな奴って……俺なの…?」
『…っ…』
悠仁…何でこんなに震えてるの…?
私は抵抗するのをやめ、そっと…
腕を下に降ろした。