第5章 トライアングルのち…【虎杖悠仁&伏黒恵・高専編】
声が聞こえるなり、真顔になって青ざめる雫。
『悠…仁……』
「お疲れ。ナナミン強すぎて、すげー早く終わったよ。釘崎とメシ行こうかと思ったら、今出てるって、ちょうどメッセージきてさ。」
『………』
虎杖を見ず、気まずそうに俺の後ろに隠れる雫。
その表情は先ほどのにこやかな表情とは真逆のものになっていた。
「…お疲れ。俺等も出てくる…またな。」
「あ、じゃあ俺も…」「今日は」
「二人で行く。」
虎杖を真っ直ぐに見つめ、そう言うと雫の手を引いて高専を後にした。
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「美味かったな、ラーメン。」
『うん…美味しかった…』
高専を出て街に出てからも、ずっと落ち込んだ様子の雫。気持ちはわからなくはないが、面白くはない。
「これからどうするんだ。」
『え……?』
「普通にできそうか?虎杖と。」
『…頑張るよ。野薔薇にも気を遣わせたくないし…恵もごめんね。さすがに今日の今日はまだ…普通にするのは難しくて…』
苦笑いしながらゆっくりと歩く雫の目に、また涙が溜まり始めた。
「映画でも行くか。」
『え…恵、映画とかあんまりじゃん…』
「お前のそんな顔、1秒だって見てたくないからな。」
好きな奴が、他の男を思いながら泣くのを見る事程、腹が立つものはないと思った。
『ごめん…』
「気にするな。気分転換になるかもしれないしな。
それに……」
『……?』
「デートっぼくもあるだろ。」
『…っ……ふふっ。』
「何だよ。」
『ううん。ありがとう、恵。丁度見たいのがあったんだ。』
映画館の前でチケットを買おうとした雫は、財布の中を探り、しばらくするとカバンの中をガサゴソとし始めた。
「どうした?」
『学生証がなくて………あ。』
何かを思い出したように固まる雫。
すぐに押し黙り、諦めたように大人料金で映画のチケットを購入した。
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「意外に良かったな。」
『ね、ホント……』
「……主人公も最後好きな奴に会えて良かったよな。」
『うん…そうだね…』
「…お前……ちゃんと見てなかっただろ?」
『…え?』
「主人公の好きな奴は死んだろ。適当に相槌打つな。」
『ごめん……』