第5章 トライアングルのち…【虎杖悠仁&伏黒恵・高専編】
「忘れたわけじゃないと思うけどさ、悠仁。
宿儺の指を全て取り込んだら、お前はどうなるんだっけ?」
「……処刑される。大丈夫だよ先生、忘れてないよ。」
ふっ、と笑って手を動かす悠仁。
「…勿論できる事はさせてもらうよ。悠仁を助けられるよう、僕なりに動くつもりではいるけど…」
これだけは言っておく。
「まずは自分の事だよ。
自分に精一杯な人間が、誰かの側にいようとか、ましてや幸せにしようなんて思わない事だ。」
「……」
「大丈夫、雫には沢山の仲間がいるさ。僕もいるし。」
悠仁の肩にぽん、と手を乗せ、部屋を出ようとドアの方に向かう。
「幸せにできなくてもさ…」
悠仁の低い声が響く。
「……」
「幸せでいてほしい、って思うのは…俺の勝手だよね。」
「…そうだね。」
驚いた。本気なんだね。
けど本気であればある程…
「俺…自分の運命を受け入れて死んだらさ、生まれ変わった時はきちんと好きな子に好きって伝えていいよね。」
「いいと思うよ…」
これ以上踏み込まない、と腹を括るだろう。
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少し釘を刺すつもりだっただけ。
もしかすると抵抗するかもしれないとも思ったけれど。
意外にも悠仁は大人だった。
嫌だね。
僕が子供みたいに何かを恐れて根回ししてるみたいじゃない。
そんな事を考えながら、野薔薇や恵が待つ教室に入っていった。
side 雫
悠仁と私は教室に遅れて入って行ったけれど、昨日は任務があって深夜に帰宅したと説明を受けたらしく、野薔薇も恵も心配してくれた。
悠仁も至って普通だった。
私だけがソワソワしていて、何だか恥ずかしい。
昼食をとるために皆で食堂に行き、出来上がった食事を取りに行こうと野薔薇と恵が立ち上がったのを見て、意を決して悠仁に話しかけた。
『っ悠仁……』
「ん?何?雫。」
『あの…昨日の事なんだけど…ちゃんと話したくて…
今日部屋に行ってもいい?それか私の部屋でも…』
「悪い、雫。俺今日任務なんだわ。ナナミンと。
あと体、大丈夫?」
『あ……そうなんだ。ごめん…
体は大丈夫だよ。任務、気をつけてね…』
「ごめんな。あとさ…昨日俺、もしかすると変な事言っちゃったかもしれないけど……忘れて?」
『え…?』