第1章 前編
ヤマトは子犬を不憫に思った。飼い犬と間違えるほどに人懐っこく、人の言葉を解すように言うことをきく。その愛嬌のある仕草を思い出す。
「引き取り先はありそうですか?」
何気なくヤマトがそう問うと、カカシがすぐさま答えた。
「そうそう、それをさ。今、方々に聞いてもらってるところ。子犬の歳とか犬種なんかを伝えたら、貰い手はあるだろうって探してくれてね」
「そうか、それなら…」
ヤマトはほっと息を吐いた。
「一応俺もね、子犬がどこから来たか探してみようと思ってる。しばらく任務で時間が取れなかったが、明日くらいならよさそうでな」
「先輩も探してくれるんですか?」
ヤマトが驚いて正面を見ると、カカシが頷いた。
「ああ、匂いをたどってみようかと思ってな。パックンに頼むつもりだよ。だからさ、ヤマト。今度あの子犬、連れてきてよ」
「え、ええ。分かりました」
「ま、いつまでもお前に世話してもらう訳にもいかないでしょ。さすがにあれから大分経つから、難しいかもしれないが……もしかしたら、来た方角くらい分かるかもしれないしな」
自分とて休暇の少ない身ではあるが、それを上回る忙しさの彼が時間を割いてくれることに頭が下がる。
「いえ、少しでも手掛かりがあれば。…先輩、ありがとうございます」
「ヤマト。悪いけど、もうしばらくあの子の世話、頼むよ」
「ええ、もちろんです」
ヤマトは明るい見通しに胸を撫でおろした。その後、自分が請け負った任務に向かうべく、上忍待機所から出て行った。