第2章 後編
大きく息を吐いてから、カスミがヤマトを見上げた。
「テンゾウさん、ありがとうございました」
「いや、僕は何も…。ちょっと付き添っただけだしね。君の熱意が伝わって良かったじゃないか」
「本当にほっとしました。しかも、一時的ですけど、綱手様の補佐が出来るなんて最高!」
執務室に入る前の絶望的な顔つきから一変、カスミは満面の笑みで歩き出した。
「いずれ、元の任務にも戻れるだろう。僕も安心したよ」
五代目も一時的に外しただけで、同じ所属に戻すつもりだったのだろうとヤマトは思った。
執務室の空気は始めこそ緊張感があったが、途中からは、側近のシズネもペットの子豚、トントンを抱きかかえて微笑んで話を聞いており、長閑なものだったからだ。
理由が理由だけに、苦笑いをするしかないような一件。
ヤマトにも、憧れ尊敬する存在がいる。カスミほどに冷静さを失うようなことはないが、気持ちはわからないでもないと思っていた。
「まあ、これからは重々気を付けて」
ヤマトはそう声を掛けて、意気揚々と廊下を歩いていくカスミを見送った。