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迷い犬

第1章 前編


背を撫でていたカカシが、訝し気な視線をヤマトに向けた。

「何だ?妙に対応に差があるな」
「いや、まさか」

薄茶色の毛並みをした、くりくりとした黒目の子犬。
可愛くて、皆代わる代わるその背や頭を撫でてやるのだが、一番嬉しそうにしっぽを振るのはヤマトが触れたときだったからだ。

「ヤマト隊長に随分懐いてますね」
「カカシ先生の方が扱い慣れてそうなのに…意外」

子犬を囲むように座り込み、皆口々に話し出す。

「何?サクラ。ちょっと傷つくんだけど。…確かに忍犬遣いだけどね、俺」
「何言ってるんですか、先輩。別に嫌がってるわけじゃないし」

表情を曇らせるカカシに、子犬を両手で撫でながらヤマトが言う。隣でしゃがみ込んでいるナルトがカカシを見た。

「でもさぁ、カカシ先生。迷い犬だとして、こいつどうするんだってばよ」
「そうね。このまま置いていくわけにもいかないわよね。飼い主がいないことに気が付かなかったら……」

ナルトとサクラが心配した顔で、子犬を見る。

「そうだな。一時預かっておいて、飼い主を探してみるか」

カカシが立ち上がってそう言った。

「ヤマト。お前、とりあえず預かっておいてよ」
「ええ!?僕ですか?」
「何?嫌なの?」
「いえ、世話できないってわけでは。何というか…僕はどちらかと言うと、動物は不得手で…」

すり寄ってくる子犬に、ヤマトは若干の戸惑いを見せた。

「何言ってんの。任務でも小動物は使うだろ?」
「まあ、確かに。でも僕は変わり身に猫を使うくらいで、あんまり頻繁には使いませんよ。先輩の方がいいんじゃないですか?」
「いいや。それだけ懐いてたらお前の方がいい」

子犬はヤマトの顔を一心に見つめ、嬉しそうにしっぽを振り続けている。

「本当だ。すごい好かれてますね」

サイは立ち上がると、子犬とヤマトの様子を交互に見て冷静に言った。「僕はあんまり動物に好かれることないんだけど」とヤマトは苦笑いを浮かべた。
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