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迷い犬

第1章 前編


ここは木ノ葉隠れの里。

任務上がりの夕暮れ時。
はたけカカシ率いる第七班は帰路に着いた。今回は、以前カカシの代理で隊長を務めたヤマトも含む、五人での任務となり、完了報告後の帰り道は賑やかだ。

ラーメン好きのナルトの一声で、任務後の腹ごしらえは一楽に決まり、班員のサクラ、サイ、そしてカカシとヤマトは早目の夕食を終えた。

人もまばらな商店街を五人でそぞろ歩きして、住宅地へと向かう通りに差し掛かると、皆の足元に何かが駆け寄る気配がある。


「ワン!」

集団の一番後ろを歩いていたヤマトが、足元に視線を向けた。すると、どこからか現れた子犬が足にじゃれついている。

「あれ?どこから来たんだろう?」

走ってきた方向も定かでなく、不思議に思いながらもヤマトは立ち止まった。しゃがみ込み、しっぽを盛んに振る子犬の頭を一撫でする。

「何々?今、犬の鳴き声がしたけど」

一番前を歩いていたナルトが、後戻りしてヤマトの脇に寄ってきた。それに続いて、サクラやサイも子犬を取り囲む。

「うわぁ!可愛い!」

コロコロとした愛らしい容姿に、サクラが歓喜の声を上げる。彼女は近づいてしゃがみ込み、頭を優しく撫でた。

「…近くの家の飼い犬でしょうか」

サイが周辺の住宅に目を向ける。しばらく耳を澄ましていたが、「どうも探しているような気配はありませんね」とまた子犬を見下ろした。

「何だ、どうした」

立ち止まる班員を遠巻きに見ていたカカシが、ズボンのポケットに手を入れたまま、最後にゆっくりと歩いてきた。皆の背後から、輪の中心を覗き込む。

「子犬?首輪もないし、忍犬でもないな。迷い犬か?」

カカシもまたしゃがみ込み、未だヤマトの足元にじゃれついている子犬の背を撫でた。

「そうかもしれませんし、捨て犬の可能性もありますよ」
「んー…それはないと思うけど。木ノ葉では珍しいよ」

犬も猫も任務でよく使う、相棒といってもよい存在だ。忍びの里である木ノ葉では、あまりそう言った動物は見かけない。

「確かにそうですね。どこかの家の子犬が外に飛び出してきてしまった、というところでしょうか」

ふかふかとした毛並みは触り心地が良くて、ヤマトはまた子犬に触れようとした。手を伸ばすと、大人しくカカシに背を撫でられていた子犬が、目を輝かせて振り向いた。キュンキュンと甘えた鳴き声を出して近づいてくる。
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