第1章 前編
ヤマトはカカシと共に建物の外へ出た。その後ろを子犬がひょこひょこと付いてくる。通りをしばらく歩き、二人は子犬を初めて見つけた場所で立ち止まった。
「さて、と…」
カカシは印を結び、口寄せの術を使った。ボフンという軽い音がすると同時に小柄な犬が現れた。カカシの扱う忍犬の一匹である、パックンだ。人語を解するブルドッグである。
「何じゃ、カカシ」
「よ、パックン。前に話した件、今日お願いしたくてね」
「おお、迷い犬の件か」
「そうそう。この子がね、その子犬なんだけどさ…」
ヤマトの後ろに隠れている子犬と、パックンを引き合わせる。子犬はフルフルとしっぽを軽く振った後、ちょこんとお座りした。パックンが近づいて、匂いを確認している。
「む!」
「何?」
驚いたような声を出すパックンに、カカシが問いかけた。
「お主…女子じゃな?」
確かに子犬は雌犬だった。カカシが呆れたように溜息をつく。
「そ、雌犬みたいよ。それで、匂いはたどれそう?」
「ふむ、中々可愛らしい顔をしておるな。しかし、儂はもっとこう、大人の色気がある…」
子犬の全体を眺めながら、パックンが好きなように話しているので、それをカカシが止めた。
「あのね、パックンの好みはいいからさ。頼むよ」
「先輩…本当に大丈夫なんですか?」
あまりにマイペースなパックンに、ヤマトが口をはさむ。
「失礼な奴じゃな。儂に任せておけば問題ない」
パックンは、ムッとしてヤマトの顔を見上げた後、スタスタと歩き出した。
「皆、儂の後に付いてこい!こっちじゃ」
二人は顔を見合わせて、パックンの後についていく。子犬も一度首を傾げて二人についていった。